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董卓呂布を恨み、貂蝉二英雄を惑わす

董卓(とうたく)とぶつかった人物は李儒(りじゅ)であった。李儒は急いで董卓を助け起こすと、董卓の質問に答えた。
「そなた、何でここに来たのだ」
「わたくし、たまたま門前まで参りましたところ、董卓様が何事かお怒りになり裏庭にお入りになり、呂布(りょふ)殿を探していると聞き、急いで参りました次第です。途中で呂布殿に出会い、『董卓様に殺される』と走ってきたので、お宥めせんと駆けて参ったところ、無礼にも董卓様を押し倒してしまったのです。どうぞご無礼をお許し下さい」
「あの裏切り者めが、わしの女に手を出したからには生かしておくまいぞ」
「董卓様、それは如何かと存じます。貂蝉(ちょうせん)はただのおなごに過ぎず、呂布殿は董卓様腹心の猛将ではありませんか。もし董卓様がこれを機会に貂蝉を呂布殿に与えれば、彼はご恩に感じ入り、命をかけて董卓様をお助けするでしょう。どうぞご考慮くださいませ」
董卓はしばらく考え込んでいたが、
「そなたの言うことも最もだ。考えてみよう」
と言ったので、李儒は下がった。

 

さて、董卓は貂蝉を呼び出し、詰問した。
「そなたは何ゆえ呂布と戯れておったのだ」
貂蝉は涙を流し、こう訴えた。
「わたくしが裏庭で花を愛でているところへ、呂布が突然参りまして『董卓様の息子であるわしを何故避ける』と脅され、追い詰められたのです。わたくし呂布に手篭めにされるのではないかと思いつめ、池に身を投げようとしましたが、呂布に抱きとめられてしまいました。正に生死の瀬戸際に董卓様にお救い頂いたのでございます」
「わしはそなたを呂布にやろうと思うのだが、どうだ」
貂蝉は大いに驚き、激しく泣いた。
「わたくし一度は董卓様のお世話に預かった身。今更下郎の下にやられるなんて。そんな恥を受けるくらいなら死んだ方がましです」
と、壁にかけてある剣を取ると自らの首を刎ねようとした。
董卓は慌ててとめて、貂蝉を抱きかかえた。
「今のは冗談だ。死ぬなど考えるでない」
貂蝉は董卓の胸の中でむせび泣きながら、
「これは李儒の差し金でございましょう。李儒は呂布と仲がよいため、こんなことを考え出して董卓様のご体面を傷つけ、わたくしを玩具にしようとしたのです」
「わしにそなたが棄てられると思うか」
「勿体ないお言葉でございますが、わたくしの余命は長くないでしょう。きっと呂布に殺されてしまうのです」
「呂布のことはわしが何とかする。末永く共に暮らそう。安心せよ」
貂蝉はこれを聞いてようやく泣き止み、礼を述べた。