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呂布貂蝉に恋焦がれ、王允計を成す

翌日李儒がやってきて、
「今日はお日柄も良いことですし、さっそく貂蝉を呂布殿にお与えになると良いでしょう」
「呂布はわしと親子の関係だ。わしの女を与えることなどできるものか。昨日の罪は咎めぬことにするから、そなたから上手く宥めておいてくれ」
「董卓様、女に惑わされてはなりません」
董卓は顔色を変えて、
「貴様は自分の妻を呂布にやることが出来るか。貂蝉の事は二度と言うな」
李儒は引き下がると、天を仰いでため息をついた。
「われらは女の手にかかって死ぬのか」

 

董卓は翌日貂蝉を連れて自分の城へ帰ると百官に伝えた。百官一同これを見送った。其の仲には呂布の姿もあり、貂蝉はわざと顔を覆って悶え泣いている様子を装った。呂布は車が遠くに遠さがっても微動だにせず、悲しみに浸っていた。すると、不意に後から声をかける者が居た。
「これは呂布殿。董卓様のお供もせず、こんなところで何をなさっていらっしゃるのですか」
呂布が振り返ってみれば、王允(おういん)である。
「こんなところでため息を漏らされるとは、如何されたのですか」
「他でもない、貴殿の娘の為にござる」
王允は驚いた振りをし、
「あれから随分たちますのに、なんとまだ呂布殿に嫁いでいないのですか」
「あの老いぼれが、とうに自分のものにしてしまったのでござる」
王允はいっそう驚いた様子を見せ、
「まさか、そのようなことが」
呂布はこれまでの経緯をこと細かく説明した。王允はしばし声も出なかったが、矢やあって、
「董卓様がまさかこのような獣にも等しい行いをするとは」
と、呂布の手を取り、
「まずはわたくしの館に参ってお話しようではないですか」
王允は屋敷の人気の無い部屋に呂布を通し、呂布の話を改めて詳しく聞いた。
「董卓様がわたくしの娘を犯し、呂布殿の妻を奪ったことは正に天下の笑いもの。しかも笑いものになるのは董卓様ではなく、わたくしと呂布様です。わたくしは老いぼれた能なしですのでそれも当たり前ですが、残念なのは一世の英雄であらせる呂布殿がこのような辱めを受けられたこと」

と王允が言えば、呂布は怒り心頭、机を叩いて怒鳴った。
「これは失言した。どうぞお怒りになりませんように」
と言うと、
「あの老いぼれを殺し、恥をすすいでみせます」
王允は慌ててその口を塞ぎ、
「呂布殿、滅多なことを口になさる者ではありません」
「男と生まれた限りは、いつまでも人の下で小さくなっておられるものではござらん」
「ごもっともです。呂布殿の器量、とても董卓様の下で収まるものではございません」
王允は言葉巧みに呂布を説いていく。