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陶謙劉備に徐州を譲らんとし、曹操甘言を持て策とする

孔融は大いに喜んだ。この日、劉備と張飛は騎馬兵一千を率いて曹操の陣に斬りこんだ。突き進むうち、一人の大将が劉備らの前に立ちはだかった。誰であろう于禁(うきん)である。
「愚か者どのが。どこへ行くつもりだ」
と大声に叫ぶ。
張飛はこれを見て問答無用で討ちかかる。両者渡り合って数合するとき、劉備が兵に命じてどっと打ちかかれば、于禁はたまらず敗走する。張飛は真っ先にこれを追いかけ、徐州の城下まで一気にかけつけた。陶謙は急いで門を開けさせて、劉備らを入城させる。挨拶を終えると宴席を設けてもてなし、兵士達もねぎらった。陶謙は劉備の人品優れ、対応が優れているのを見て心中大いに喜び、糜竺に命じて徐州の責任者の印鑑を持ってこさせ、劉備に譲ろうとした。
「これは何事ですか」
劉備が愕然とすると、
「今天下は大いに乱れて、皇帝が威を奮うことが出来ない有様。劉備殿は漢皇室のご一門にござれば、力を皇室のために振るわれるものと存じます。それがし何の能もなくいたずらに長くこの職を賜りましたが、今、劉備殿にお譲りしたく存じます。なにとぞお受けくだされ。それがしただちに上奏文を朝廷にお送りいたしましょう」
劉備は席を降りて再拝し、
「わたくしは漢皇室に連なる者とはいえ、功少なく徳薄く、今の役職さえ過ぎたものと思って威おります。このたびは大義によって馳せ参じましたが、このようなお言葉を頂くとは、わたくしにご領地を乗っ取ろうとの下心があるとお疑いか。もしわたくしがそのような野心を抱いておれば、たちどころに天罰が下ることでありましょう」
「これは何をおっしゃる。これはそれがしの心から出たことでございます」
と、陶謙が再三譲ろうとしたが、劉備が受けるはずも無い。
この時、糜竺が進み出て、
「今は敵兵が城下に迫ってきていることもあります故、まずはこれを退ける策を話し合い、事態が収まってから改めてお譲りすることにしてはいかがでしょうか」
「それなら、わたくし曹操に書面にて和議を求め、もし聞き入れなければ皆殺しにしてくれましょう」
と言って劉備は軍に出陣を控えさせると共に、使者を曹操の下に差し向けた。

 

さて曹操が陣中にあって将軍らと軍議をしていたところに、劉備からの書状が届いた。曹操がそれを読むと、
「無礼な。このわしに指図をしようというのか」
と怒声を上げるなり、
「使者を斬り捨てて、力攻めにせよ」
と命じた。
郭嘉(かくか)がこれを諫めて、
「劉備には好言をもってこれにお答えになり、彼を油断させておいて一気に攻めかかれば、城を取ることも叶うでしょう」
曹操はこの献策を受け入れて、使者をねぎらい、しばらく待たせておいて策を練っている時、突然早馬が報をもたらした。