三国志演義.com - やさしく読める三国志演義 -

劉備小沛に軍を留め置き、曹操呂布と敵対す

劉備は慌てて、
「いやいや、わたくしが徐州の救援に参じたのは、義の為でござった。それを今、そのような大任を奪い取るような真似をすれば、わたくしは天下の人々から義を知らぬ輩と謗られることでございましょう」
そこで糜竺が、
「今や漢王室は衰えて天下はことごとく乱れ、功を立て業を立てるのは正にこの時にあると思われます。どうぞお気持ちを曲げてお引き受け賜りくださるようお願い存じます」
と言っても、劉備は、
「こればかりはお引き受けするわけには参りませぬ」
そこで陳登が、
「陶謙殿お体を損ねていらっしゃって、お役目を果たすことも難しい状況ゆえ、曲げてお引き受けのほどお願い申し上げます」
劉備は、
「名家の出身で、天下の人民の心を集めている袁紹殿がこの近くにいらっしゃいます。彼に譲られたらよろしいのではないですか」
孔融は、
「彼はもはや抜け殻に等しく、言うに足りませぬ。このお話は正に天の与えしもの。いま徐州をお引き受けなさらなければ、後に悔いても悔い切れませんぞ」
しかし劉備は頑として受け入れない。
陶謙は涙を流しながら、
「劉備殿に見捨てられたら、それがし死んでも浮かばれませぬ」
そこで関羽が、

「陶謙殿がここまでおっしゃられる上は、兄者、しばらく代わって徐州をお治めになられたら如何でござるか」
張飛が、
「俺達が無理矢理国を寄越せと言ったわけでもないし、向こうが受けてくれといっているのだから、何も遠慮することは無いじゃないか」
劉備はそれを聞くと、
「お前達はわたくしを不義理者にしたいのか」
陶謙は再三譲ろうとしたが、劉備は全く受け入れようとしない。そこで陶謙が、
「もし劉備殿がどうしてもお聞き入れ下さらないと言うのであれば、この近くに小沛(しょうはい)という所がありますので、そこに軍を留めおいて頂き、しばらく徐州をお守り下さいませんか」
と言えば、一同も同様に進めたので、劉備も従った。

 

趙雲が辞去する際、劉備はその手を取って涙をしとどに流して別れた。孔融らもそれぞれ別れを告げて、軍を率いて引き揚げた。劉備は関羽、張飛と共に小沛に居を構え、城壁を繕い、住民に恩恵をもたらした。

 

さて、曹操が軍を率いて引き揚げると、曹仁(そうじん)が途中まで出迎えて呂布の勢いが強く、更に陳宮が彼を補佐している為、劣勢である旨を報告した。曹操は、
「呂布は武勇はあるものの策が無い男だ。何程のことだ」
と、一旦陣を構えさせておいて、改めて軍議を催した。
呂布は曹操が軍を返して近づいてきていると聞くと、副将二人を呼んで、
「これより兵一万を率いてえん州の守りを固めるように。わしは兵を進めて曹操を打ち破ってくる」
と命じ、二人は畏まって承知した。