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呂布えん州を盗り、濮陽にて曹操と衝突す

しかし陳宮が急いで止めた。
「呂布様はえん州を棄てて、どこへ行かれようと言うのですか」
「わし出陣して、曹操を打ち負かすつもりだ」
「それはいけません。その策ではとてもえん州を守りきることは出来ません。これより南へ百八十里行った泰山の山間に精鋭一万を伏兵として潜ませるのがよろしい。曹操の軍はえん州が破れたのを聞けば、必ずや急いで参るでございましょうから、その半ばをやり過ごして一撃すれば、一挙に全軍を生け捕りに出来ましょう」
「わしが出陣するのは良策があっての事。そなたの知るところではないわ」
呂布はついに陳宮の言葉を聞き入れず、副将にえん州を任せて出発した。

 

さて、一方曹操の軍が泰山にさしかかった時、郭嘉が言った。
「ご用心くだされ。ここには伏兵がおりますぞ」
曹操は笑った。
「呂布は策なき男。副将にえん州を任せ出陣したのでもそれは分かる。ここに伏兵を置くような頭の回る奴ではない。曹仁に兵を与えてえん州を囲ませ、わしはそのまま進んで呂布の不意をついてくれよう」
陳宮は曹操の軍勢が迫ったと聞いて、
「今曹操の兵は遠路はるばるやって来て疲れきっております。この機に一気に打ち破るのが最善の策です。気力を養わせるようなことは禁物にございりますぞ」
と進言したが、呂布は、
「ただ一騎で天下を馳せ回ってきたこのわしが、曹操ごときを恐れると思うか。乗り込んで生け捕りにしてくれるわ」
と、聞き入れなかった。

 

さて曹操の軍は濮陽(ぼくよう)に近づいて陣を構えた。翌日、諸将を従えて出陣すると、呂布の兵の来るのを待ち望む。やがて呂布がたどり着くと、左右に八人の勇将を侍り並び進む。その顔ぶれは、姓は張(ちょう)、名は遼(りょう)、字は文遠(ぶんえん)、第二は姓は臧(ぞう)、名は覇(は)、字は宣高(せんこう)。この二大将軍を筆頭にその他六名の勇将を従え、総勢五万の兵で挑んだ。
曹操が呂布に指をつきつけて、
「わしは貴様から何の恨みも買った覚えは無い。我が国を奪うとは何事か」
と言えば、呂布も、
「誰が取ろうと漢の城は漢のものだ。貴様が独り占めする道理は無い」
と言い返し、臧覇に先陣を切らせて戦いを挑む。曹操は楽進(がくしん)を出陣させこれに応じる。両将馬を駆け穂先を合わせ、三十余合しても勝負がつかない。曹操の陣営から夏侯惇(かこうとん)が加勢に出れば、呂布の陣中からは張遼が受けて出て切り結ぶ。
呂布が面倒とばかりに戟を片手に馬を飛ばして突っ込めば、夏侯惇、楽進共に馬を並べて逃げ帰った。呂布がこれを追って殺到すれば、曹操の軍勢は総崩れになって三、四十里引いたので、呂布も軍を収めた。曹操は一敗をかみ締め陣屋に戻ると、諸将と協議を行なった。そこで于禁(うきん)が進み出て言う。