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陳宮策を弄して曹操を騙し、曹操逃亡を図る

曹操(そうそう)が慌てて馬を駆けたとき、真南より一隊の軍勢が到着した。夏侯惇(かこうとん)が手勢を率いて駆けつけたのである。夏侯惇は呂布(りょふ)を相手に奮闘した。暮れ方になるとたらいを覆したような豪雨となったので、互いに軍を引いた。曹操は陣屋に戻ると典韋(てんい)を厚く賞した。

 

さて呂布は陣屋に引き取って陳宮(ちんきゅう)と会議を行なったが、陳宮いわく
「濮陽(ぼくよう)の者のふりをして曹操の陣屋へ密使を送らせ、『呂布は配下に城を任せて自身は移動しようとしている。是非夜に紛れて兵を勧められよ。さすれば自分が内応する』という密書を届けさせましょう。もし彼が来たら、城内に誘い込んで四方の門に火を点け、門外に伏兵を潜ませておくのです。さすれば例え曹操であろうと逃れることは出来ますまい」
呂布はこの策を取り入れ、曹操の陣屋へ人をやった。曹操は一敗を喫して如何したものかと思案にくれていたところに、突然使者が来て密書を届けに来たという知らせ。
「これぞ天の助け」
曹操は大いに喜び、使者を丁重にねぎらうと共に、出陣の用意を始めた。そこへ劉曄(りゅうよう)が、
「呂布は策を練るだけの頭が無い男とはいえ、参謀の陳宮は中々の策士です。おそらくは何か企みがあるものと思われます。用心が肝要でございます。殿がお出ましになるとおっしゃるのであれば、軍を三手に分けて、二手を緊急の場合に備えて城外に潜ませておき、一隊を城内に差し向けられますよう」
と進言した。
曹操はこれに従った。この日の正午前後、城門が開かれると二人の敵将が戦いを挑んできた。曹操は典韋に出馬を命じたところ、敵将は敵わず城内に逃げ込んだ。この混乱に紛れて一人の兵士が曹操の陣屋に駆け込み、密書を差し出した。いわく、
『今宵八時ごろ、銅鑼の音を合図に兵を進められたい。それがし門を開かん』
とのこと。曹操は夏侯惇に左翼を、曹洪(そうこう)に右翼を固めさせ、己は夏侯淵(かこうえん)、李典(りてん)、楽進(がくしん)、典韋の四将を従え、兵を率いて入場しようとした。その時李典が、
「殿はしばらく城外にお控えください。まずは我らが様子を伺ってまいります」
と言ったが、曹操は、
「わしが進まなければ誰が行くか」
と言い、自ら兵を率いてまっしぐらに突き進んだ。すると城門から法螺貝の音が響いて城門がさっと開かれると同時に吊り橋が下ろされた。曹操は真っ先に馬を駆け、一気に州役所まで至ったが、人影一つ無い。さては計られたかと、急いで手勢に退くように命じた。