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曹操計に陥り、火中より救われる

「退け」
曹操が怒鳴った時、四方の門から天を焦がさんばかりの火の手が上がり、銅鑼、太鼓が一斉に鳴って鬨の声が辺りを埋め尽くす。そこへ東から張遼(ちょうりょう)、西から臧覇(ぞうは)が討って出て、両側から挟みこんでくる。北門を目指して走ると、曹性(そうせい)らが討って出て、切り込んでくる。慌てて南門に走れば、またも敵将が行く手を阻む。典韋が鬼の形相で切りかかれば、敵将は逆に城外に逃れ出た。典韋が吊り橋まで斬り抜けてきて後ろを見ると、曹操の姿が無い。再び城内に斬り入ったところ、李典に行き会った。
「殿はどこだ」
李典は、
「俺も探しているところだ」
と答える。
「では貴公は城外へ加勢を呼びに行ってくれ。わしは殿を探してくる」
と、典韋が言えば李典は去り、典韋は城内を突き進んで曹操の姿を捜し求めたが見つからぬ。今度は楽進に出会ったので、曹操の行方を聞くと、
「俺も探し回ったが、お目見えにならぬ」
「ならば、二人して斬り入りお助けいたそう」
二人が門前まで来た時、石火矢が雨あられと射掛けられて、楽進の馬は棒立ちとなる。典韋は火煙の真っ只中に飛び込んで、敵兵を切り倒しながら探し回った。

 

さて曹操は典韋が斬って出るのを見かけたが、四方から取り囲まれて南門を出ることが出来ず、再び北門へ向かうところを、炎の中から戟を片手に馬を躍らせてくる呂布と行き会った。曹操は手で顔を隠し、馬に鞭をくれて行き過ぎたが、呂布が馬首を引き返して追いつき、戟で曹操の兜を叩いた。
「曹操はどこだ」
曹操は、
「この先を栗毛の馬に乗っていくのが曹操でございます」
呂布はそれを聞くなり曹操に興味を無くし、曹操の指差した方向に馬を駆けた。曹操は東門目指して走るところを典韋と行き会った。典韋が曹操を守って血路を切り開き、城門の辺りまで来れば、炎燃え盛ること激しく、一面火の海であった。典韋がこれを掻き分け、馬を飛ばし駆け抜ければ、曹操も後を追って出る。ようやく門の下まで来た時、燃え盛る梁(はり)が焼け落ちて曹操の馬に当たった為、馬はどうと倒れた。曹操は腕から髭、髪の毛まで残らず焼け爛れた。典韋が馬を返して助けるところに夏侯惇が駆けつけ、二人力を合わせて曹操を火中より救い出した。こうして混戦は夜の明けるまで続き、曹操はようやく陣屋に戻った。
諸将が曹操の前に拝伏すれば、曹操は明るく笑って、
「匹夫の計にかかるとは業腹な。この恨みは必ずはらしてやるぞ」
と言う。