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楊彪離間の計を用いて、李かく、郭を引き裂く

楊彪の策とは次のようなものであった。
「まずあの李かくと郭を同士討ちにさせ、兵力が弱まったところを曹操に詔を下して逆賊を残らず攻め滅ぼさせ、朝廷の安泰をもたらそうとの策にございます」
「して、それをどうやるのか」
「郭の妻は非常に嫉妬深い女と聞き及んでおります。よって人を彼女の元に使わして『離間の計』を打たせれば、かの逆賊どもは互いに殺し合うことになるでしょう」
こうして帝は密詔を楊彪に下し賜うた。楊彪はただちに妻を郭の館へ向かわせ、郭の妻に言わせた。
「郭様は李かく様のご夫人にお心を寄せられ、お二人とも大層なご執心なそうですよ。もし万が一李かく様のお耳にでも入りましたら、郭様のお命は危のうございます。何とかお二人を引き離すようになさった方がよろしゅうございますよ」
郭の妻は驚いて、
「まあ、主人がこのところ、とんと家に帰らぬと思っておりましたら、そんな恥知らずなことをしていたのですね。お教えいただかなければ、わたくし気付かぬところでした。ありがとうございました」
楊彪の妻が帰ろうとすると、郭の妻は何度も礼を言って別れた。数日して、郭がまた李かくの館の宴に出かけようとすると、妻が言った。
「李かく様は裏表のある方です。ましてや今は乱世のさなかでございます。もしあの方に毒でも盛られるような事でもあれば、わたくしはどうすればよいのでしょう」
郭が全く聞き入れないのを、しつこく勧めてついに宴に出るのを諦めさせた。夜になって李かくは宴席での料理を届けて寄越した。郭の妻はひそかにそれに毒を入れておいて郭に差し出した。郭が箸を着けようとした時、妻が、
「あなたは大事なお体です。外から来た物を食べる時は毒見が必要でございますよ」
と言って、まず犬に食わせたところ、犬はたちまち死んだ。以来、郭は李かくに不信感を抱くようになった。
またある日、李かくが無理矢理に郭を自分の館に誘って酒宴をした。夜になり、郭は酔って家に戻ったが、突然腹が痛み出した。妻が、「毒を盛られたに違いありません」と。糞尿を取り寄せて飲ませると、胃の中の物を吐き出して痛みが止まった。
郭は大いに怒り、
「わしは李かくと力を合わせてこれまでやって来たというのに、今になってわしの命を狙うとは何ということよ。わしが先に手を下さねば、必ず殺されるであろう」

と、ひそかに部下の兵を集め、李かくを討とうとした。しかし決起前に李かくに伝える者があり、李かくは大いに怒り、部下の精鋭を選りすぐって郭を襲った。両軍の兵は合わせて数万、長安城下は兵士で満ち溢れ、それに乗じて良民から略奪を働く者が数多くいた。