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李かく献帝を幽閉し、郭大官を捕らえる

李かくの甥は献帝(けんてい)と伏皇后(ふくこうごう)を車に乗せて内裏から無理矢理引き出した。車は賈くらに見張らせて、他の女官、宦官らを徒歩で追い立てた。そうして門から押し出した時、郭の兵士と真正面からぶつかり、やたら滅法に矢を射かけられて女官が数知れず死んだ。そこへ李かくが駆けつけたので、郭の兵が退くところを、車を大急ぎで走らせて、自分の陣地に引き込んだ。郭は兵を率いて内裏に踏み込み、女官をことごとく攫って来た上、宮殿に火をかけて焼き払った。
翌日、郭は李かくが献帝を奪ったと知り、李かくの陣営の前で大合戦に及んだので、献帝、伏皇后共に恐怖で魂も消えるばかりに驚かれたのであった。

 

さて、郭の軍勢は押し返されて、しばらく出てこなかった。この間に李かくは、献帝と伏皇后の車を別の城に押し込み、甥に監視させ、人の出入りを止めた。これにより飲食もままならず、近臣たちは飢餓に苦しむようになった。献帝が近臣のために、李かくに食事を催促なさったところ、李かくは、
「朝夕食事を差し上げておるのに、他に何が必要だと言うのだ」
と怒り、腐った肉や古い米を与えたので、とても口にすることが出来なかった。
「逆賊めが。ここまで朕をないがしろにするか」
と献帝が罵られると、お側の者が慌てて、
「李かくは残虐非道の性を持っております。こうなりました上は、今しばらくご辛抱くだされ。彼の乱暴を招くのはよろしくありません」
と奏上したので、献帝はお言葉もなく涙を流された。

 

と、その時城の外にどっと鬨の声が上がった。これは李かくが郭を迎え撃ったものだった。李かくが言うのには、
「わしは貴様から恨みを買うようなことをしておらぬのに、何故わしを殺そうとしたのだ」
郭も負けじと言い返す。
「貴様は逆賊だ。殺さずにいられようか」
「わしは帝と皇后をお守りしておるのだ。逆賊とは何事だ」
「お守りしているとはよく言ったものだ。奪ったのではないか」
「黙れ。こうなったら果し合いを致そう。勝ったものが天子を取るのだ」
こうして二人は陣頭で切り結び、十合して勝負が決まらぬところに楊彪が駆けつけてきて、
「ご両人、しばらく矛を収められよ。それがしご両人の和睦を取り計らって進ぜよう」
と叫んだ。
李かく、郭がそれぞれの陣へ引き揚げれば、楊彪は朱儁と共に朝廷の大官六十人あまりを集め、まず郭の陣を訪ねて和睦を勧めた。しかし、郭は大官たちをことごとく監禁してしまった。