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皇甫れき李かくと郭を説いて回る

大官たちは、
「我々は貴殿の為を思って参ったのに、この扱いはどういったことか」
郭は、
「李かくは天子を奪ったではないか。わしが大官を捕らえて何が悪い」
と、言い放った。
そこで楊彪が、
「一方は天子を奪い、一方は大官たちを奪って、一体何をしようというのか」
この言葉に郭は大いに怒り、楊彪を斬ろうとしたが、諫める者がいたため剣を収め、楊彪と朱儁を放し、その他の大官たちはすべて監禁した。
楊彪は朱儁に、
「国家の重臣でありながら陛下をお救い出来ないとあれば、生きている意味が無い」
と言うなり涙を流して昏倒した。朱儁は帰宅して病気になり、病死した。
これより李かく、郭は日ごとに合戦を繰り返し、五十余日にも及び、死者は数知れなかった。

 

さて、この時献帝に密かに奏上する者があった。
「わたくしの見ますところ、賈くは李かくに使えておりますが、まだ帝へのご恩を忘れてはおりませんゆえ、なにとぞ彼を用いりますよう」
と言っている側から賈くが現れた。献帝は人払いの上涙を流されながら、
「そなたに漢王朝を憐れと思い、朕の命を救ってくれる気持ちは無いか」
賈く(かく)は拝伏して、
「それはもとよりわたくしの願うところでございます。陛下にはいましばらくご他言なさりませんよう。わたくしが良いようにお取り計らい致します」
献帝は涙を収めて礼を言われた。間もなく李かくが現れたが、剣を帯びたまま御前にまかり出たので、献帝のお顔は土気色に変わられた。李かくは献帝に、
「郭は不忠にも、大官を監禁し、陛下を奪い奉らんと計っておりますぞ。わたくしがいなければ、陛下は彼に捕らわれていたことでしょう」
と奏上した。帝が礼を述べられると、そのまま退出した。この時、皇甫れき(こうほれき)が同行した。献帝は彼が弁論に長け、李かくと同郷の出であることをご存知であったので、両者を和睦させるように命じられた。皇甫れきは詔を奉じて郭を説いた。郭は、
「もし李かくが天子を送り出したら、わしも大官を放してやろう」
皇甫れきはすぐさま李かくを訪ねた。
「このたび天子はそれがしが貴殿と同郷の誼があるのをご存知で、それがしにご両人の仲をまとめるように仰せられました。郭殿はすでに詔に従われました。貴殿はいかが思われるか」
「わしには呂布を破った大功があり、以来朝廷をおたすけして四年、数々の功績は天下の知るところじゃ。ところが郭はたかが馬盗人風情、それをおこがましくわしには向かおうとするからには、叩き殺してやるばかりだ」
と言って聞き入れない。