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李かく巫女を尊び、楊奉反旗を翻す

李かくは
「これぞ巫女が祈祷したおかげだ」
と喜び、巫女に恩賞を授ける反面、武将達には何もしなかった。
楊奉は大変怒り、他の武将に向かって、
「我々は命がけで戦ってきたのに、巫女の祈祷に劣ると言うのか」
その言葉を受けた武将も、
「李かくを殺して、天子をお救いしようではないか」
と答えた。
楊奉は、
「貴方は陣の中から火を掛けて合図してくれ。わしは兵を率いて外から攻め掛かる」
と、二人はその夜の十時前後に兵を挙げることを約束した。しかし、李かくにこれを知らせた者がいた。李かくは大いに怒り、まず陣中に居た武将を捕らえて殺した。楊奉は兵を率いて外で待っていたが、合図がない。異変を感じたところ李かくが自ら将兵を率いて討って出てきた。夜中の二時前後まで乱戦になったが、楊奉は打ち負かされて、軍を率いて西安へ逃げ延びた。李かくの勢いはこれ以降次第に衰えていった。そこへ郭から頻繁に攻め立てられて、多くの兵士達を失った。その頃、張済(ちょうさい)からの使者が来て、次のように伝えた。
「張済様が大軍を率いて訪れ、李かく殿と郭殿の和睦を計ると申しております。もしお聞き入れならぬ場合は、大軍をもってして打ち滅ぼすとのお考えです」
李かくはこれを機に、郭の軍に使者を送り和睦を申し入れた。郭もやむを得ず承知した。こうして、張済は天子に洛陽へ戻られる事を上奏した。
献帝は、
「朕は長い間洛陽のことを思っておった。この機に帰ることが出来るとあれば嬉しく思うぞ」
とお喜びになり、張済に恩賞として大将軍の位を授けた。張済は食糧、酒、肉を献じて、百官に供した。郭が捕らえていた官吏たちを解放したので、李かくは天子を車に乗せて東へ向かい、近衛兵数百名を警護に当たらせた。

しかし車が県をまたいで進んだ頃、唐突に鬨の声が上がり、数百の兵士が橋の上に駆けつけて車の前を遮り、
「これは何者か」
と猛々しく咎めた。李かくの将軍は、
「恐れ多くも天子様の御車であるぞ。これを遮るものは何者か」
と言うと、二人の武将が進み出て、
「我々は郭将軍の命令を受けてこの橋を守り、賊の出入りを防いでいる者だ。そうとあれば、天子のご尊顔を拝さねば信用できかねる」
これを聞いて帝は、
「朕がここにおるのに、何故そなたらは退かぬのか」
とお叱りになった。諸将は一斉に万歳を唱え、両側に立ち並んだ。こうして車は問題なく通る事ができた。二人の武将が立ち返って郭に、
「天子の御車がお通りになりました」
と報告した。