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曹操大いに猛威を振るい、李かく、郭を退ける

しかし董承(とうしょう)が言うには、
「もし戦って敗れたらどうします。むしろ、今は一旦山東に逃れるのが宜しいかと存じます」
帝はその意見を取り入れて、早速山東へ向かった。洛陽を出たばかりという頃、当方より砂塵が上がり、銅鑼(どら)や太鼓の音が響き渡った。多数の兵馬が近づいてきて、帝は皇后と共に震え上がり息を飲んでおられるところに駆けつけてきた者があった。これぞ先に山東に遣わされた勅使であった。
勅使は帝の御前に伏して、
「曹操将軍は山東の全軍を率いて、陛下のご警護に参じさせてございます」
これを聞いて帝はようやく心安らかにおなりになった。
ところがそこへ、物見の者が立ち返って、
「李かく、郭が軍勢を率いて追って参りました」
夏侯惇(かこうとん)と曹洪(そうこう)は左右に分かれ、賊軍に攻めかかった。李かく、郭らは散々に駆け散らされて、一万を超える戦死者を出した。そうして帝に洛陽へのご還幸を請い、夏侯惇は城外に駐屯した。
翌日、曹操が大軍を率いて到着すると、帝に謁見した。
「臣はかねてより御国の大恩を受けており、常々ご恩に報いたいと考えておりました。この度の李かく、郭らの罪は誠に深いものです。臣は必ずや賊めを打ち滅ぼしてみせます。陛下におかれましてはお体を健やかに養われて、国家の大事を見据えてくださるようお願い申し上げます」
帝は曹操の位を上げた。

 

さて李かく、郭は曹操が上京した旨を知って、兵士達の疲れが抜けない内に戦いを決しようと話し合った。
賈く(かく)がそれを諫めて、
「それはよろしくおありません。曹操の軍は、武将は猛将で兵は勇敢です。むしろ降参して、これまでの罪を免れる以外にありません」
と言うと、李かく、
「貴様、わしが負けると言うのか」
と言って賈くを斬捨てようとした。周囲の者が何とか鎮めて事は収まったが、その夜、賈くは一人故郷へ落ちのびた。

 

次の日、李かくが甥二名を出陣させれば、名乗りも上げぬ内に許ちょ(きょちょ)がこれを斬り捨てる。曹操は大いに喜び許ちょを讃えた。そしてただちに夏侯惇に左翼から打って出るように命じると、自らは本体を率いて突進した。こうして賊軍は総崩れとなり、敗走した。曹操自ら兵に命じ、全軍を率いて夜通し追い討ちをくらわせたので、討ち取られる者、降参する者数知れずいた。李かく、郭は命からがら落ち延びたが、行く先もなく山賊に成り果てた。

 

さて、楊奉らは、
「こうして曹操が大功を立てたからには、大権を握る事は必定。とてもわれらをそっとしてはおくまい」
と話し合った上、李かく、郭を追い討ちすると言う名目で暇を得た。