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曹操、董昭と天下の策を語らう

ある日、帝は曹操の元に人を遣わし、参内するようお召しになった。曹操は勅使のおなりと聞いて、お通しした。すると其の人物は精気に満ち溢れていて、この大飢饉で兵士も民も飢えに苦しんでいるというのに、この人物だけが肥えふとっている故を不思議に思った。
曹操は、
「貴殿はいかにも福々したお顔をしておられるが、どのようにしたらそのように飢えに苦しまずに済むのであろうか」
「特に養生といものはやっておりません。ただ三十年間、精進物しか口にしなかったまで」
その回答に曹操は益々興味を持ち、どういった人物か訊ねた。
「手前は天子のご還都を聞いて、特にお仕えいたしたく参った者です。姓を董(とう)、名を昭(しょう)、字を公仁(こうじん)と申す者でございます」
聞いて曹操は、
「ご高名かねがね伺っておりましたが、こうしてお会いできたのはまたとない幸せです」
と、酒を出してもてなした。
そこへ、
「一隊の軍勢が東へ向かいました」
との報告があった。曹操が急いで調べるよう命じたところ、董昭が、
「それは李かくの元の部下、楊奉らです。曹操殿がおいでになったので、手勢を移そうとしているのでしょう」
「わたくしを疑っての事ですな」
「あの者たちには策などありません。ご心配は不要でしょう」
「李かく、郭を逃がしてしまったが、いかがしたものでござろう」

「もはや奴らに出来る事はございません。ほどなく曹操殿の手に取り押さえられる運命でしょう。気にするまでもござらぬ」
曹操は董昭が言う事の筋が通っているので、朝廷の大事を尋ねた。
「曹操殿が逆賊を退け、朝廷に上がって天子を補佐されるのは当然のことと思われます。しかし、色々な考えをする者もおり、皆がみな素直に賛同するとは考えられないでしょう。ですから今は天子に許都へお移り頂く事こそ上策かと思われます。しかしこの度はようやく天子が落ち着いたばかりのこと。中には煩いことを言う者もおりましょう。とは言え、異常な事を行わなければ、異常な功績は挙げられないと思われます。曹操殿のご決断を望みます」
曹操は董昭の手を取って笑いながら、
「それこそわたくしがかねがねより考えていた事です。だが、変事の起こる気遣いはないでしょうか」
「そのご懸念は無用でしょう。楊奉に書面を送って安心させておいた上、大臣達には都には食料が乏しい故、食糧の搬入に交通の便が良い許都に天子にお移り頂くと説明すれば、喜んで従うでしょう」
これを聞いて曹操は大いに喜んだ。