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曹操許都へ遷都を勧め、道中徐晃を欲する

さて、董昭が辞退しようとすると、曹操はその手を取って、
「今後ともよろしくご指導ください」
と言い、董昭は厚いもてなしに感謝して帰った。

 

曹操はこの日以来、遷都の密議を行なった。そしてついに決心を固めると、帝に謁見し、
「東郡は長らく荒廃して打ち棄てられていたため、容易に修復いたしかねます。加えて、食糧の搬入にも便が悪く、兵も民も飢えております。そこで許都は食糧の流通に優れており、城壁宮殿ことごとく備わり、人民富み栄えております。以上の理由により、恐れながら許都へのご遷都を申し上げます。なにとぞお聞き入れ下さいますよう」
と、奏上した。帝はこれに反論する事がおできにならず、諸官もみな曹操の勢いを恐れて、誰一人異議を唱える事ができなかった。これにより、遷都が決まった。
ついに吉日を選んで許都へ出発した。曹操は軍を率いて警護に立っていたが、進むこと数日して、どっと鬨の声が上がり、楊奉が軍を率いて行く手を遮り、徐晃(じょこう)が真っ先に乗り出して大声で、
「おい曹操、天子を奪って何処へ行こうというのか」
曹操は馬を乗り出して、徐晃の威風凛々たる姿に内心賞賛を送りながら、許ちょに出馬を命じた。徐晃と刃を合わせること五十余合しても勝負がつかない。そこで曹操は銅鑼を鳴らして兵を収めて協議を行なった。
「楊奉らはたいしたことが無いが、徐晃は本当の勇将だ。わしは策略をもってして彼を我が軍に迎えたい。誰か良い案は無いか」
とはかると、満寵(まんちょう)が言うのに、
「殿、ご懸念には及びませぬ。それがしは彼と面識があるため、弁論をもって彼の心を動かし、お味方に馳せ参じてご覧にいれます」
曹操は喜んで彼を遣わした。
その夜、満寵は雑兵に返送して敵陣に紛れ込み、密かに徐晃に近づいた。そして声をかけるに、
「その後お変わりありませんか」
徐晃は驚いて満寵をじっと見つめていたが、
「貴公は何故ここに」
「それがしただいま曹操将軍にお仕え致しておりますが、本日の合戦にてお懐かしいご雄姿を拝見し、一言申し上げたくて決死の覚悟で参上しました」
徐晃が席を進めて来意を問うと、

「貴殿は世に比類なき武勇と才略をお持ちですのに、何故楊奉らごとき輩に身を屈しておられるのです。曹操将軍は良く賢者をお用いになられます。本日の合戦にて貴殿の武勇をご覧になっていたく敬服され、貴殿の命を奪われる事をしのび、それがしをお迎えに遣わされたのでございます。貴殿も暗主を棄てて明君に遣え、共に大業をなそうではありませんか」
と、答えた。