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曹操徐晃を臣下に加え、荀ケ『二虎競食の計』を論じる

徐晃はしばらく熟考していたが、しばらくして吐息を漏らした。
「わしとて楊奉らが小物である事を知らないわけではないが、長く仕えてきた身。捨て去るには忍びないのじゃ」
「従うべき主人に会いながら、些細な事からお仕え出来ないのは勇将のすることではございませんぞ」
徐晃は立ち上がって礼を述べ、
「貴公の言葉に従おう」
「さらばこれより楊奉らの首を取って、お目見えの引き出物とされたらいかがでござる」
「家来のみで主人を弑するのはこの上ない不義。とてもわしには出来ぬ」
「それでこそ真の義士と申すもの」
こうして徐晃は部下数十騎を率いて、その日の内に曹操のもとに身を投じた。これをいち早く楊奉に知らせた者があった。楊奉は大いに怒り、自ら千騎を率いて後を追った。
「裏切り者の徐晃、待たぬか」
と、叫んで追いかけるも、四方から伏勢が打って出た。曹操自らその先頭に立って、
「待ち受けたぞ。覚悟いたせ」
と大声で一喝する。
楊奉は慌てふためき、急ぎ兵を引き返そうとしたが、曹操の軍勢に取り囲まれてしまった。そこへ折りよく救援が駆けつけ、両群入り乱れて戦う中を、何とか逃げる事ができた。曹操が敵の乱れに乗じて勢い込んで攻めかければ、楊奉らの軍勢は大半降参した。楊奉らは敗残兵を引き連れると、袁術(えんじゅつ)を頼って落ちのびた。

 

曹操が軍を収めて戻ると、満寵は徐晃を引き合わせた。曹操は大いに喜んで、徐晃を重く用いた。こうして天子を許都にお迎えして宮殿を造営し、城壁や国庫を修復した。褒賞や罪人の処罰は全て曹操の思いのままにおこなわれた。彼は自らを大将軍に封じ、自らの腹心たちに官位を授けた。これ以来、大権は全て曹操のものとなり、朝廷の用事はまず曹操へ報告してから天子にお伝えする事になった。

 

こうして曹操は大業を成し遂げたので、幕僚たちを集めて密議した。
「劉備(りゅうび)は徐州(じょしゅう)にいて、呂布(りょふ)を領地内に住ませている。もしあの両名が心を合わせて挑んでくるようなことがあれば、余は心痛を抱える事になるだろう。何か妙計はないか」
許ちょが、
「それがしに兵士五万を与えてくだされば、両名の首を取って丞相(じょうしょう。天子に次ぐ位の官職。ここでは曹操をさす)に献上しましょう」
荀ケ(じゅんいく)、
「許ちょ将軍は武勇に秀でていらっしゃるが、謀(はかりごと)を用いることをご存じない。今は遷都が終わったばかりの事で、軽々しく兵を動かすべきではありません。それがしに一計があり、『二虎競食の計』と申す。二人の仲を引き裂き相食むようにしむけるのです」
と、言った。