三国志演義.com - やさしく読める三国志演義 -

荀ケ再び策を講じ、劉備袁術と開戦す

勅使は曹操に、劉備が呂布を殺そうとしない旨を報告した。曹操は荀ケに問うた。
「この策がならずとすれば、どうしたらよいか」
「まだ一計ございます。これを名付けて『虎を駆りて狼を呑ましむるの計』と申すもの」
「その計とは」
「袁術に密使を送って、劉備から袁術の治める地を攻め入ろうと献策があったと言わせるのでございます。そうすれば袁術は必ず怒り、劉備を攻めようとするでしょう。そして殿より劉備に袁術討伐の詔を下されれば、両者が戦う事になります。そうすれば、呂布が必ずや裏切りの心を起こしましょう」
曹操は同意し、その通りにした。

 

さて、劉備は曹操の密書を開いて読めば、袁術討伐の軍を起こせと書いてある。劉備は使者に勅命を承ったと言って送り返した。糜竺(びじく)が、
「これも曹操の計略に違いありません」
と言ったが、劉備は、
「それはよく分かっているが、勅命に違うことはできぬ」
と言って、兵を挙げることとした。
城の留守を守る者を決める段階で、張飛が、
「俺にやらせてくれ」
と言うが、劉備は、
「そなたでは守りきれまい。そなたは酒癖が悪く、飲めばやたらに兵士を殴りつけるし、行動が軽率で人の諫めも聞き入れないではないか。心もとなくて任せられぬわ」
「俺が以後酒を飲まず、兵隊どもを殴らず、皆の諌めを聞き入れるようにすればいいんだろう」
糜竺が、
「口先だけでなければよろしいのだが」
張飛は怒って、
「俺は長年兄貴に仕えてきて、一度でも約束を破った事があるか」
劉備は、そこまで言うならと張飛に留守を任せる事にした。但し、お目付け役として陳登(ちんとう)を残して兵を起こした。

 

さて袁術は、劉備が兵を起こしたと聞いて、
「こちらから攻め亡ぼそうと思っておったところを、逆に寄せてくるとは不届き者め」
と大いに怒り、猛将紀霊(きれい)に命じ十万の軍勢を率いて徐州へ殺到させた。両軍は道中にて遭遇したが、劉備は少数の兵士しか率いていなかったので、山を背にした河原に陣を構えた。
紀霊は、
「おのれ劉備、百姓風情が我らの領地を侵すとは何事か」
と大声で一括すると、馬を駆けて劉備に斬りかかった。そこへ関羽、
「下郎が」
と一言、馬を躍らせて紀霊と激しく切り結ぶ。三十合あまり斬り合っても勝負がつかず、紀霊が一旦休憩を挟むと叫んだので、関羽は馬首を返して陣に戻り、相手の出方を待った。
すると紀霊は副将を出馬させた。
関羽は、
「紀霊を出せ、雌雄を決せよ」
副将、
「貴様如き名も無き輩が、紀霊将軍のお相手とは笑止千万」
関羽は大いに怒って副将に斬りかかり、一合の下に斬り殺した。劉備が兵に後に続くよう命じれば、紀霊は散々に打ち崩された。
こうして両軍対峙のまま、しばし時が流れた。