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張飛酒に溺れ、曹豹を鞭打つ

さて、張飛は劉備の出立を見送った後、ある日宴席を設けて諸官を招いた。
「兄貴は出立の時、俺に酒を慎んで失態を犯さぬよう固く言いつけて行った。みんな今日一日心行くまで飲んで、明日からは酒を断ち、俺を助けて城を守ってくれ。とにかく今日は存分に飲んで楽しんでくれ」
と言って席を立つと、酌をして回った。すると曹豹(そうひょう)が言った。
「それがし酒を断っているため、飲む事ができませぬ」
「何だとこの野郎、俺の酒が飲めないと言うのか」
曹豹は震え上がり、一杯だけ飲んだ。
張飛は大杯を傾けて数十杯も立て続けに飲み干したので、早々に酔いが回ってきたところ、またも席を立って一同に酌をして回った。曹豹は、
「実はそれがし、酒が飲めぬのでございます」
「さっき飲んだばかりなのに何をぬかすか」
曹豹が頑として受け入れないので、酔っ払った張飛はいつもの癖でかっとなり、
「貴様、俺の命令が聞けぬと言うのか」
と言うと、兵士に命じて杖で百打ちの刑に処せと命じる。陳登が、
「劉備殿は出立の際に貴殿に何と言われたか、思い出してくだされ」
と言ったが、張飛は一向に聞き入れない。
曹豹はやむを得ず、許しを請うて、
「張飛殿、何卒それがしの婿の顔に免じてご容赦願いたい」

「婿とは誰だ」
「呂布でござる」
これを聞いて張飛は大いに怒り、
「貴様、呂布の名を持ち出して俺を脅そうとするからには我慢ならねえ。ぶん殴ってやる。貴様を殴るのは呂布を殴る事と同じだ」
一同が止めようとしたが受け入れられず、曹豹に鞭五十が下されたとき、皆が頼み込んでようやく許して貰った。曹豹は恨みに思い、その夜の内に書面を呂布に送った。その内容は次の通りである。
張飛の無礼の数々を挙げ連ね、劉備は城を空けており、今宵張飛が酔いつぶれている今、兵を率いて徐州を襲いたまえ。この機会を逃すべからず。
呂布は書状を見て、陳宮(ちんきゅう)を呼んで相談すると、
「いま徐州を取る隙があるのに、これを逃しては後に悔やんでも悔やみきれませんぞ」
と言われて、呂布はただちに徐州へ攻め込んだ。曹豹が内応して門を開けさせたので、呂布の手勢はわっと喚声をあげてなだれ込んだ。その時張飛は酔い潰れていたが、周りの者が慌てて揺り起こし、
「呂布が攻め込んできました」
張飛は激怒して打ち出たが、まだ酔いが残っていて体が満足に動かない。呂布も張飛の腕前を知っているので、あえてかかろうとしない。そうして徐州はあっという間に落とされてしまった。呂布は城内にはいって住民を安心させ、劉備の屋敷を守らせ、勝手に人が踏み入れるのを禁じた。

 

さて曹豹は張飛が酔っているのを見くびって討ち取ろうとしたが、張飛は大いに怒り一突きで曹豹を刺し殺した。
張飛は付き従ってきた者を率いて劉備に合流し、事の顛末を詳しく語った。
関羽が、
「お前は留守をしたいと言った時、何と言った。兄者がなんと言われたか。よくおめおめとその面を晒せたな」
張飛はこれを聞くと大いに恥じ入り、自刎しようと剣を取る。さて、張飛の命はどうなるか。それは次回で。