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孫策光武皇帝に詣で、太史慈と武を争う

孫策は大いに喜んで、二人を取り立てた。

 

さて、張英が敗れて帰ると、劉ようは怒って斬り捨てようとしたが、周りの者が懸命に助命したため城に駐屯させることとした。劉ようは自ら兵を率いて山の南麓に陣を取り、孫策は北麓に陣を取った。孫策は土地の者を呼んで尋ねた。
「この近くに漢の光武皇帝(こうぶこうてい)の廟(びょう)はないか」
土民は、
「廟ならこの山の上にございます」
孫策、
「わしは昨夜、夢で光武皇帝に呼ばれた。これから参詣してくる」
という。周囲の者は劉ようが南に陣を構えている事を理由に止めたが、孫策は聞き入れない。結局程普ら十三騎を従えて出発し、山に登って参詣した。すると馬にまたがって諸将に向かって、
「わしはこれから峠を越して劉ようの陣を探ってこようと思う」
と言った。一同が思い留まるように言ったが、孫策は皆を引き連れ南方の村や林を視察した。
この報せが物見の兵から劉ように伝えられた。
「これは孫策の誘いの手じゃ、追うな」
と劉ようが言ったが、太史慈は、
「この機を逃せば、二度と機会は無い」
と陣を出た。
「度胸のあるものはついて来い」
と叫んだが、ただ一人、身分の低い武将が、

「太史慈殿こそまことの勇士。それがしお供いたす」
と従ったが、劉ようの諸将は嘲笑うばかりであった。

 

さて、孫策はしばらく劉ようの陣を眺めていたが、ようやく自陣へ戻る事にした。峠を過ぎようとしたとき、上から叫ぶ者がある。
「孫策、待てい」
孫策が振り返ってみれば、二人の武将が飛ぶように馬を駆けさせてくる。太史慈は、
「孫策はどいつだ」
と荒々しく問いただす。
「そういう貴様は何者だ」
孫策が問い返すと、
「わしは太史慈だ。孫策を手捕りにしに来たのだ」
孫策はからからと笑い、
「わしが孫策だ。貴様らが二人がかりでかかってこようと、逃げるようなわしではないぞ」
「貴様らが一度にかかってこようと、恐れはせぬ」
言うなり太史慈は、馬を駆り、槍をしごいて孫策に突きかかる。孫策もまた槍を持ってこれを迎え、両者打ち合うこと五十合に及んだが勝負が付かず、程普らは心中ひそかに太史慈の実力を認めた。太史慈の方は孫策の隙の無い見事な槍さばきを見て、逃げる振りをして孫策を捕らえようとした。孫策は追いかけると大声で、
「逃げるとは卑怯だぞ」
と怒鳴った。
太史慈は心中で『相手は多勢だ。たとえ孫策を手捕りにしてもすぐに奪い返されてしまうだろう。もうしばらく引き回し、奴を一人きりにしてから討ち取ってやろう』と考えた。