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呂布袁術と仲違いし、縁組を失う

さて于禁は、曹操らが到着したのを見て、真っ先に戦いの支度を整えた。近くの者が、
「一部の兵が、于禁将軍が謀反したと言い立てて丞相(曹操のこと)がお出ましになったと申しますのに、何故言い訳もしないで陣を作ったりするのでございますか」
と言ったが、于禁は、
「追っ手がすぐそこに来ようというのに支度もしないで言い訳などしてどうするのだ。まずは敵を退けることが大事だ」
と言った。
さて、張しょうの軍勢が二手に分かれて殺到してきた。于禁が真っ先に討ってでると、曹操に従う諸将もこれを見て、手勢を率いて散々に打ち破った。戦力の大半を失った張しょうは、敗残兵を駆り集めて劉表の元に落ちのびた。
曹操が于禁から事情を聞くと、夏侯惇の監督不行届を認め、于禁の位を上げて褒賞を与えた。さらに典韋のために葬儀を開くと、諸将を顧みて、
「わしは長男と甥を死なせたが、こうして泣くのは典韋のためである」
と言ったので、一同感じ入った。

 

さてその頃、曹操の臣下が詔を奉持して呂布のもとを訪れた。詔を読めば位を上げて特別に印綬を賜うとのこと。呂布が嬉々としているところに、袁術の使者が到来したので、呂布はただちに話を聞いた。すると使者は、
「袁術殿は近々皇位にお昇りになりますので、ご子息のお妃を早く送られるようご催促にございます」
「逆賊め、何を抜かすか」
呂布は大いに怒り、その使者を斬り棄てるとともに、同時に曹操に正式に徐州の責任者に任命してくれるよう頼んだ。曹操は呂布が袁術との縁談を取りやめたことを知って大変喜んだ。そこへ陳登が進言した。
「呂布は畜生の如き奴。腕力ばかりで考える頭がないばかりか、道理をわきまえぬ男にございます。早い内に殺してしまうのがよろしいと存じます」
「奴が野心家で、長く味方にしておけないことは、わしも知っている。彼の内情を知り尽くしているのは汝ら父子だけだが、わしの力になってくれい。
「丞相が手を下される時は、それがし必ずお手引きいたしましょう」
曹操は喜んで、陳登の位を上げて領地を与えた。また、父親の陳珪には俸禄を送った。陳登は徐州に立ち返って呂布に目通りをし、
「父は俸禄を贈られ、それがし太守に任ぜられました」
と言えば、呂布は
「なんだと、貴様はわしのために徐州の牧を手に入れようともせず、己の官位のために働いてきたか。貴様の父親は曹操殿に味方して袁術との縁談を取りやめるようにわしに説いておきながら、わしには何一つ取らせず、おのれら父子だけが高位を掴み取ったわけか」
呂布が剣を引き抜いて斬りかかろうとしたとき、陳登は笑って、
「曹操殿は呂布殿を鷹に例えられました。『狐や兎がまだ残っている内は餌も十分にはやれぬ、飢えている内は役に立つが、腹が満たされれば飛び去ってしまうからな』そこでそれがしが狐や兎とは誰の事か尋ねると、袁術、袁紹(えんしょう)、劉表、劉璋(りゅうしょう)、張魯(ちょうろ)らの事とのことでした」
呂布は剣を投げ捨て、
「さすが曹操、良くぞわしの事を知ってくれた」
と笑ったところへ、にわかに袁術の軍勢が徐州へ押し寄せ来るとの報せがあった。正に、縁組も整わぬ内に仲違い、というところ。さてこの始末はどうなるか。それは次回で。