三国志演義.com - やさしく読める三国志演義 -

呂布戟を射て戦を収め 娘を嫁がせる

矢は弧を描いて見事戟に命中した。呂布は大笑し、
「これは貴公らに合戦をやめよという天からのお告げじゃ」
といい、酒を振舞った。そして呂布が劉備に、
「わしが居なかったら危ないところであったな」
と言った。
こうしてそれぞれの軍勢は翌日陣を引き払った。

 

紀霊は袁術に呂布が和睦をとりなしたことを説明し、呂布からの書面を差し出した。
袁術は大いに怒って、
「わしが直々に出陣し、劉備を亡ぼし呂布も痛い目にあわせてやろう」
というと、紀霊が、
「殿、呂布の武勇は並外れたもので、今攻めるのはよろしくないと思われます。それよりも呂布の娘と殿のご子息の間で縁談を結び、呂布が劉備を攻めるよう仕掛けるがよろしゅうございます。これぞ『疎きは親しきをへだてずの計』にございます」
袁術はこの言に従って、呂布に縁談を申し込んだ。
呂布はこの話を承知し、使者をもてなした。
ところが陳宮が、これは呂布に劉備を討たせるための謀略だと見抜き、使者に問いただした。そこで使者と相談し、陳宮が呂布に即日娘を嫁がせるよう説くこととした。陳宮は使者と別れるとそのまま呂布のもとに赴き、
「袁術殿のご子息と殿の姫君のご縁談おめでとうございます。しかし、このお話が他人の耳に入れば嫉むものも出てくるでしょう。道中姫君を奪おうとするやからが出てくるかもしれません。この上は、諸侯の耳に入らぬ内に姫君を袁術殿のもとに送り、改めて吉日を選んでお輿入れいたすのが万全の策でございます」
「貴公の言葉、いかにももっともじゃ」
呂布は喜んで娘を即日送り出した。

 

さて、その花嫁道中の楽の音を聞きつけた陳登(ちんとう)の父親陳珪(ちんけい)が、側の者に理由を尋ねたところ呂布の娘が袁術の息子のもとに嫁ぐという。その答えを聞いて、
「これは『疎きは親しきをへだてずの計』じゃ。劉備殿が危ない」
と察し、呂布のもとを訪れて言った。
「先日袁術は殿に贈り物をして劉備を亡ぼそうと計りおったが、呂布殿が和睦させました。ところが今日、だしぬけに縁組を申し入れたのは、姫君を人質にして、その上で劉備を攻め小沛を取ろうとの下心からにござる。小沛がほろべば徐州も危い。しかも、袁術は兵や兵糧を貸せと言ってくるでしょう。これは承知しても断っても呂布殿には損にしかなりません。ましてや袁術は帝位を称える心を持ちおるとか。これは謀反でござる。このままでは呂布殿は謀反者の縁者と成り果てるでしょう」
呂布は仰天して、急ぎ娘を奪い返すと共に、袁術の使者を閉じ込めた。