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曹操小桝で兵糧を配り、首を落として不平を平らげる

さて、曹操の軍は兵士が十七万もいるため、日々の兵糧の消費がはなはだ激しかった。更に旱魃が起こり、瞬く間に兵糧が尽きようとした。曹操は速やかに勝負を決しようとしたが、敵は城の門を閉ざして合戦に応じようとしない。その状態が一月余りも続いて、兵糧がすっかり無くなってしまったので、孫策に米十万石を借り受けたが、これでも焼け石に水だった。倉庫係が曹操の前に歩み出て言った。
「兵糧がとてもまかないきれません。いかが致しましょうか」
「小さな枡で配って、しばらく急場をしのいでおくように」
「兵士が不満を持つような事があれば、どう致しましょうか」
「その時はわしに考えがある」
倉庫係は曹操の言に従って小さな枡で兵糧を配分した。そこで案じていた通り、兵士の中から不満の声が上がった。そこで曹操は倉庫係を呼んだ。
「兵士の不満を静めるため、是非そちに借りたいものがある」
「何をお望みでしょうか」
「そちの首を借りたいのだ」
倉庫係は仰天して、
「なんと仰せられますか。それがし罪を犯した覚えはござりませぬ」
「それはわしもよく知っている。しかし、そちを殺さねば軍がみだれるのだ。そちの亡き後は妻子の面倒はしかとみる故、心配致すな」
倉庫係が更に言葉を連ねようとした時、曹操は刑手を呼びつけて、門外に引き出して首を刎ねた。そうして「この者兵糧を盗んだ罪により、軍律をもって刑に処す」との告示を出したので、兵士らの不満はようやくおさまった。

 

翌日、曹操は各軍の将校に、
「三日以内にこの城を落とすべし」
と命令すると共に、自ら兵士に混じって壕を埋め立てる作業をした。これを見た大将から兵卒に至るまで士気大いに奮い、我先にと競って城壁を乗り越え、門のかんぬきを斬りおとしたので、大軍が一斉に城の中になだれ込んだ。曹操の軍は敵将をことごとく捕らえ打ち首にした。
曹操はさらに兵を進めて袁術を追い討とうとしたが、荀ケ(じゅんいく)が言うのに、
「兵糧不足に苦しんでいる今、更に軍を進めるのは兵を疲弊させ民を苦しめるだけです。ひとまず許都にお帰りになり、来春兵糧が十分備わってから、改めてご出馬なさるのが至当かと存じます」
曹操がどうしたものかと悩んでいる時に、にわかに早馬が到着して、
「張しゅう(ちょうしゅう)が劉表(りゅうひょう)と手を結び、再び勢いを盛り返しております。曹洪(そうこう)殿は敵勢に押されて敗戦を重ね、もはや一刻の猶予も無い有様でございます」
とのこと。