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曹操策を講じて、賈くこれを見破る

曹操はただちに孫策に劉表を牽制して足止めをするように命ずると共に、自らは即日陣払いをして、張しゅう討伐を考える事とした。

 

さて曹操が軍を率いて許都に帰るなり、李かく(りかく)、郭(かくし)を殺して、首を献上してきた者があるとの報せがあった。更に李かくの一族二百余名を引っ立ててきたとのことで、曹操は彼らの首を刎ね、その首を晒し物にした。人民は口々に快哉を叫び、喜ばぬ者はいなかった。このようなときに曹操が張しゅう反乱を奏上し、討伐の軍を起こすべきと述べれば、天子は曹操の出征を親しくお見送りになった。曹操は荀ケに許都を任せ、自らは大軍を率いて張しゅう討伐に出立した。

 

行軍の途中、麦が実っているにもかかわらず、百姓たちが軍を恐れて刈り入れをせず、遠くへ逃げているのを見た曹操は、「誰であれ麦を踏んだ者は斬首に処する」と触れを出した。百姓たちはこれを聞いて曹操の得を讃え、道端に土下座して伏し拝む有様だった。しかし曹操が騎馬で進むうち、一羽の鳩が畑の中から飛び立ったので、驚いた馬は麦を散々に踏み荒らしてしまった。曹操はただちに臣下を呼び、己の罪の処分を問うた。臣下が言うのには、
「丞相を罰する法がありましょうか」
しかし曹操は、
「わしが自ら法を定めながら、それを自ら破るような事をしてはしめしがつかん」
と言うなり、剣を抜いて己の首を刎ねようとしたのを、一同が慌てて止めた。
「丞相は大軍を統べるお方。自害される道理がありません」
と、郭嘉(かくか)に言われて、曹操はしばらく黙考していたが、
「わしはしばらく命を預けてもらおう」
と、己の髪を斬りおとして地面に投げつけ、
「これをもって首にかえておく」
と言った。
この一件は軍の末端まで伝わり、兵士たちは恐れおののき、軍律を守らぬ者はなかった。

 

さて、張しゅうは曹操が軍勢を率いてやってくると聞いて、急ぎ劉表に後援を頼むと共に、手勢を率いて出陣した。そして馬に乗り出すと曹操に向かって罵った。大いに怒った曹操は許ちょ(きょちょ)に出馬を命じた。張しゅうは許ちょと応戦すること三合、馬から斬り落とされ、軍勢は総崩れになった。張しゅうは急ぎ城内に入り、門を閉ざして出てこようとしない。曹操は自ら城の周りを丹念に見て回っていたが、三日目に、西門の隅に薪を積み上げそこから城壁にとりつくよう諸将に命じた。
ところが城内では賈く(かく)がこの様子を眺めていて、張しゅうに言った。
「曹操の作戦はすでに見破りました。この上は、敵の裏をかいてやりましょう」
さてその計とはいかに。それは次回で。