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賈く智謀により 張しゅう、劉表ともに軍を引く

その時すでに劉表の軍勢は陣を構え、背後からは張しゅうの軍勢が迫ってきていた。曹操は夜の暗闇に紛れて山道を切り開き、伏兵を潜ませた。劉表、張しゅうの両軍は明け方合流したが、曹操の軍勢が少ないのを見て、曹操が少ない兵を率いて逃げたと思い、兵を率いて山間の道に攻め込んだ。そこを、曹操が伏兵を一気に出して散々に打ち破った。

 

そこへ荀ケから「袁紹(えんしょう)が兵を起こして許都を侵略しようとしている」との報せが届いた。曹操は慌ててその日の内に引き揚げる事とした。張しゅうの間者がこれを知らせてきたので、張しゅうが追おうとすると、賈くが、
「追えば必ず敗れるでしょう」
と止めたが、劉表が、
「今追わなければ、好機を逃すというものだ」
と張しゅうを誘い、一万余りの兵を率いて曹操軍の後を追った。やがて曹操軍に追いついたが、思いもよらぬ奮闘振りに、追っ手の両軍は大敗してしまった。
張しゅうが賈くに、
「貴公の忠告を聞かず、見事にやられてしまったわ」
と言うと、賈くは、
「今こそ軍を整えて追撃なさいませ」
「敗れて帰ったばかりの今、もう一度追えとはどういうことだ」
と、劉表、張しゅうが訊くと、
「今追えば、必ず勝つ事ができるでしょう。もし出来なければそれがしの首を進ぜましょう」
張しゅうは賈くの言を信じたが、劉表は疑って出陣しようとしなかった。張しゅうが曹操軍を追撃すると、賈くの言う通り圧勝である。逃げる曹操軍をさらに追い討ちをかけようとしたところ、山陰より一隊の軍馬が加勢に来たので、やむなく追撃を諦め引き揚げた。
劉表が賈くに尋ねた。
「最初は屈強の兵をもって退却する兵を追ったのに、貴公は必ず敗れると言われ、後には敗れた兵をもって勝った兵を追うのに、貴公は必ず勝つと言われ、その通りになった。ともにおっしゃる通りになったのは何故か、なにとぞお教え願いたい」
「簡単なことでございます。曹操は戦略において達人でございます。例え敗れたとしても、勇将を後詰として追っ手を防ぐ事は欠かさないでしょう。また、曹操が帰りを急ぐのは、必ず許都に異変があったからに違いがありません。それならば、一度追っ手を破ったからには後詰の兵もひたすら先を急ぐに違いがありません。その虚に乗じてかさねて追い討ちしたが故に破る事ができたのでござる」

張しゅう、劉表ともにその先を見通す目に感服したが、賈くから両名とも兵を引き払い、お互いに助け合うように勧められて、両名そのようにした。