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郭嘉 曹操の十の勝利を説く

さて曹操は先を急いでいたが、後詰が追撃を受けたとの報告に、急いで諸将を率いて加勢に駆けつけたところ、張しゅうは既に兵を退いた後であった。敗兵が、
「もし山陰より駆けつけてくれた軍勢が支えてくれなければ、我らは皆手捕りとなっていたところでございます」
と告げたので、曹操が急いでその人を召すと、曹操の前に現れたその武者は、姓は名李(り)、名は道(つう)、字は文達(ぶんたつ)であった。曹操が、どうしてここへ参上したのかと尋ねると、
「このたび丞相が張しゅう、劉表と合戦と聞き、お力添えに馳せ参じたものです」
との答え。曹操は喜んで彼を用いて、張しゅう、劉表に備えるように命じた。
曹操は許都へ戻ると、孫策の大功をたたえ、呉侯の爵位を賜るように奏上し、劉表を防ぎ土地を治めるように詔を伝えた。
曹操が丞相府に戻ると、荀ケが尋ねた。
「丞相が退く際、わざと行軍を遅らせられ、必ず勝つと仰られたのは何故でございますか」
「あの時は退路もなく、生きるか死ぬかの戦いより他に手段が無かったので、わざと敵をおびき出したのだ。それゆえ、必ず勝つと申したのじゃ」
荀ケはこれに感服した。
そこへ郭嘉(かくか)がやってきて、一通の書面を取り出し曹操へ渡した。
「ただいま袁紹の使者が書面を持参し、公孫さん(こうそんさん)を攻めるため、兵糧と兵を借用したいと申して参ったのでございます」
「奴め、許都を狙って折ると聞いてが、わしが帰ったのをみて気を変えおったな」
と、封を切って書面を読めば、その言辞すこぶる傲慢なので、郭嘉に尋ねた。
「何たる無礼な奴だ。袁紹を討伐したいが、それには力が足らぬ。どうしたらよいか」
「今、袁紹には十の敗因があり、殿には十の勝因がございます。

一に袁紹はことごとく煩雑な手続きを踏んでいるのに対し、殿は全て自然に任せておられます。これは道における勝利。
二に彼が天下に逆らっているのに対し、殿は人民の望みに従って天下を従えておられます。これは義における勝利。
三に彼が法律に緩いのに対し、殿はゆるぎないものとなさっておられます。これは治における勝利。
四に彼が寛容な外面の裏に深い嫉妬を隠し、用いるものもほとんど縁者に限っているのに対し、殿は一見粗雑にして実は高い見識を隠され、人を用いるにもその才能を第一に重んじられます。これは度量における勝利。
五に彼は謀が多く、決断力に乏しいのに対し、殿は策を得られれば迅速に実行に移されます。これは謀における勝利。
六に彼が名声によって人を見るのに対し、殿は真心から人に対されます。これは徳における勝利。
七に彼が気をつけるのは身近なものばかりであるのに対し、殿のご配慮は万事に至っております。これは仁における勝利。
八に彼が讒言にも惑わされるのに対し、殿は人の讒言を用いるような事は一切なされません。これは明における勝利。
九に彼が是非を明らかにせぬのに対し、殿は法を曲げられることがございません。これは文における勝利。
十に彼が虚勢を張るのを好み、用兵の術を知らぬのに対し、殿はその用兵は神の如くであります。これは武における勝利。
この十の勝因がある以上は、袁紹を破ることなどいともたやすいものでございます」