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呂布女に諭されて 酒に溺れる

呂布はただちに屋敷に戻って出陣の用意をしたが、妻が出てきて言った。
「呂布様が遠方にお出かけになされては、もし変事が起こった際はわたくし呂布様に二度とお会いできなくなるのではございませんでしょうか」
その言葉に呂布は思い留まって、三日間引きこもっていた。陳宮が罷り出て言った。
「曹操の軍勢は四方から囲みにかかっております。今の内に出陣いたせねば、囲まれること必須でしょう」
「わしは城を固めた方が良いと思うのじゃが」
「近頃、曹操軍は兵糧が欠乏し、許都へ取りに行っていると聞き及んでおります。兵糧は近々着くことになるでしょう。呂布将軍は精鋭の兵士を率いてその歩みを絶たれるがよろしゅうございます。そうすれば敵を挫くことが出来ましょう」
呂布は再び妻にこのことを告げた。すると妻は涙ながらに訴えた。
「呂布様がご出陣の後、陳宮らにこの城を守りきれるでしょうか。ご出陣の暁には、どうかわたくしのことなどお忘れくださいませ」
と言うなり、泣き伏した。
呂布は大いに心かき乱され、貂蝉(ちょうせん)に話すと、
「私のためと思って、軽々しくご出陣されるのはお止めくださいませ」
「分かった。心配致すな。わしには戟もあれば赤兎馬(せきとば)もある。わしに近寄れるような者はおらぬわ」
そして部屋を出て陳宮に言った。
「曹操の兵糧が着くとか申すのは嘘じゃ。曹操は奇策を弄する奴じゃが、わしはその手には乗らぬぞ」
陳宮は呂布の前を辞して出ると、ため息をついた。
「これでわしたちは野たれ死と決まったか」

 

これより呂布は終日家を出ず、妻や貂蝉と共に酒で胸の内のわだかまりを誤魔化していた。そこに呂布に献策する者があった。
「今袁術(えんじゅつ)は大いに威勢を奮っております。呂布将軍は先に彼と縁談を結ばれた間柄です。援助を求められたらよろしいではございませんか。もし袁術の軍勢が来たら、内外より挟んで攻めれば、曹操の軍勢といえども破ることが出来ると存じます」
呂布はその計に従って、その日の内にその者を使者に遣わすことにしたが、
「一隊に先に討って出てもらわねば、とても行く事ができません」
と言うので、張遼らに兵一千を与え、劉備の固める山間の外まで送り出させることとした。

 

さて、使者は袁術にまみえ、持参した書面を差し出した。
袁術は、
「先にはわしの使者を殺して当方からの縁組を踏みにじったくせに、今頃このようなことを言ってくるとは何事じゃ」
と言った。