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袁術娘を求め 呂布囲いを抜けんと欲す

「それは曹操の謀に惑わされたものです。どうかご明察をお願いいたします」
「お前の主人は曹操の兵に攻め抜かれて、娘を差し出すと言い出したのであろうが」
「陛下が今お救い下さらねば、陛下の御為にもならぬことではないかと存じますが」
「呂布は口先だけの男故、まず娘を送って寄越せば兵を出してやろう」
使者もそう言われてはこれ以上食い下がることも出来ず、呂布の元に引き返した。その際、闇夜に紛れて駆け抜けたが、張飛が陣屋から躍り出て使者の一人を生け捕りにし、五百の手勢はことごとく斬り捨てられた。張飛が使者を劉備の前に引っ立てれば、劉備は彼を本陣へ引っ立てて曹操にまみえた。使者が加勢を求める為に縁組をした一件を事細かに話すと、曹操は大いに怒って使者の首を刎ね、各陣へ防御を固めるように触れて、もし呂布及びその配下の者を取り逃がした者は、軍律に乗っ取って処断する旨を告げさせた。
劉備は関羽、張飛に向かって、
「ここは袁術の治める地への要路故、そなたたちも曹操殿の命令に違わぬように致せ」
すると張飛が、
「賊を捕らえたというのに、恩賞の沙汰をするどころか逆に脅かすとは、曹操の奴無礼じゃないか」
劉備、
「それは違う。曹操殿は大軍を統率しておられるのだ。軍律を正しくせねば、人々を服従させることもかなわぬのじゃ」
と、命令を守るように重々言い含めた。

 

さて、呂布は使者から袁術は娘を貰ったら援軍を出すと言った旨を詳しく告げた。
呂布は城が囲まれている中、どのように娘を送り出せばよいか思案した。そこへ使者が告げた。
「他の者ではあの重囲を破ることは出来ますまい。ここは呂布将軍が直々にお送りなされなければならないと思案いたします」
翌日の夜中、呂布は娘を背中に背負うと、戟をひっさげて馬に跨った。城門を押し開くなり呂布は真っ先に討って出でる。劉備の陣屋にさしかかると、太鼓の音が響き、関羽、張飛の二人が行く手に立ちふさがって、
「止まれ」
と叫ぶ。呂布は敢えて戦う気もなく、ひたすらに押し通ろうとするところに、劉備が自ら軍勢を率いて駆けつけ、両群入り乱れての合戦となった。流石の呂布も娘に怪我をさせてはと思うと、本領を発揮できない。そのうち後ろから徐晃(じょこう)、許ちょらが殺到してきて、口々に
「呂布を逃がすな」
と叫びたてる。呂布は止むを得ずいったん城内に戻った。ついにこの時囲いを突破できる者は無く、呂布は城内に戻ってからも悶々として、酒に浸っていた。