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呂布配下の信を失い 赤兎馬を盗まれる

さて曹操は、城を取り囲んで二ヶ月経っても落とす事ができずにいた。そこで諸将を集めて言った。
「今なお北には袁紹(えんしょう)がおり、東には劉表(りゅうひょう)、張しゅう(ちょうしゅう)がおって一国の油断もならぬ。わしは呂布討伐を見棄てて都に帰り、しばらく戦を休みたいと思うのじゃが、どうであろうか」
荀攸(じゅんゆう)は急いでこれを止め、
「それはなりませぬ。呂布は度重なる敗北に、既に鋭気を失っております。今この機にこそ呂布を討つべきです」
と言うと、郭嘉(かくか)が、
「それがしに呂布を攻略する策がございます」
すると荀ケ(じゅんいく)が、
「水攻めにするのではござらんか」
と言うと、郭嘉は意を得たと言わんばかりに笑って、
「いかにも」
と返事をする。
曹操は軍氏たちのやり取りに喜び、すぐさま河の水を決壊させた。曹操軍は高原に陣取って、高みから下?城が水に囲まれる有様を目下に眺めていれば、城は東門を残して他の門は全て水に浸かった。呂布は、
「わしには赤兎馬(せきとば)がある。この位なんでもないわ」
と、連日酒に耽っていた。しかしそれも過ぎてきて、相貌は衰えてきた。ある日、鏡で己の顔を見た呂布は驚いて、
「わしは今日から断じて酒は飲まぬぞ」
と言い、酒を口にした者は斬って棄てると城内に触れを出した。

これより呂布の横暴極め、配下の者たちは、
「呂布は妻子のことばかりを考えて、わし等の事は塵芥同然に思っているのだ」
「城下はことごとく囲まれて、城壁も水浸しとあってはわしらの命も長くはない」
「呂布は仁義を知らぬ男だ。いっそ奴を見捨てて逃げてはどうだろう」
「逃げるのではなく、呂布をひっ捕らえて曹操殿に献上しようではないか」
「呂布がたのみとしているのは赤兎馬だ。わしはまず馬を盗み出して曹操殿にお目にかかろう」
と話し合った。この夜、先に赤兎馬を盗むと申したものが、その通りにし曹操に献上し、他の者が白旗を合図に門を開く旨をつぶさに説明した。曹操はこれを信じ、署名入りの矢文を城内に射込ませた。その概要は次の通りである。

 

大将軍曹操、このたび詔を奉じて呂布を征伐する。もし官軍に逆らう者があれば、城を攻略した暁に一族皆殺しにせん。しかし、呂布を手捕りとして献する者、もしくはその首を献する者は身分を問わず厚く恩賞を与える次第である。

 

次の日の明け方、城外に天地を轟かすような鬨の声が起こった。呂布は大いに驚いて、戟を片手に城壁に上り、各門を視察したが、愛馬を盗み去られたのを知って憤慨した。