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帝董承に詔をさずけ、董承仲間を募る

さて献帝はお帰りになると伏皇后(ふくこうごう)に仰せになった。
「珍が即位して以来、董卓(とうたく)の乱に始まり李かく(りかく)、郭(かくし)の乱にあって、この世のものとは思えぬ苦しみを味わってきた。その後曹操を得て、初めて忠臣を得たと思ったのも束の間、曹操も禽獣の仲間であった。このままでは近々彼が乱を起こすのは必須。そうなったら我ら夫婦はいつどこで死ぬことになるかも知れたものではない」
「朝廷にお使えしております大臣の中には、国難を救おうという者は一人もいないのですか」
その言葉が終わらないうちに、突然伏皇后の父である伏完(ふくかん)が入ってきた。
「陛下、ご心配は無用です。わたくし、国賊を除く者を一人推挙致します」
「舅殿も曹操の専横をこころよからず思っておいでだったか」
「勿論でございます。しかし朝廷の全ては曹操の一族が取り仕切り、わたくしには力がございませんが、国舅の董承(とうょう)殿なら頼みになりましょう」
「董国舅が進んで国難に赴く人であることは珍も承知している早速参内を命じよう」
「お待ちください。陛下のお側の者たちは全て曹操の腹心にございます。もしことが漏れたら一大事にございますゆえ、慎重に越したことはございません」
「では、どうしたらよい」
「密書を仕込んだ衣類をご用意し、これを下賜する名目で董承殿を参内させるのがよろしいかと存じます」
そこで帝は自らの指先を噛み切り、その血で密書をしたためると衣類に縫い付け、董承を呼び付けた。
そして衣類を下賜すると、
「帰宅の上、よくよくこれを調べるように。珍の気持ちを無にすることがないよう」
と囁いた。

 

その頃、曹操に帝が董承を呼びつけたと囁いた者があった。曹操は帰宅中の董承を呼び止め、
「国舅殿、何のご用で参ったのか」
「帝よりこの衣類を賜ったのです」
曹操は怪しんで衣類を確かめようとする。董承必ずこの衣類に密書が隠されていると思っていたので、見つからないか生きた心地がしなかった。
しかし密書は見つからず、董承は九死に一生を得た心地で帰宅した。そして衣類を隅々まで調べ、深夜にようやく見つけることができた。その大略は、曹操を滅し宮廷をあるべき姿に戻すようにとのことである。董承は信頼できる仲間を集め、董承を含め六人の忠義の士が集まった。
「あと少し仲間がいれば心強いものを」
と呟く者がいたところ、突如一人の仲間である馬騰(ばとう)が、
「この人こそ、その人だ」
と言う。さてその言葉の人物とは。それは次回で。

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