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劉備雷に恐れた様子を見せ、曹操警戒を緩める

やむを得ず劉備が数名の名を上げるものの、曹操は笑って取り合わない。
劉備は音を上げて、
「これより他は存じ上げません」
と答えた。すると曹操は、
「英雄とは、胸に大志を抱き、腹に大謀を秘め、豪気を備えた者じゃ」
「して、それは」
曹操は劉備と己を指さし、
「今の世で、天下の英雄と呼べるのは、貴公とわしじゃよ」
その一言に劉備ははっと息をのみ、手にしていた箸を思わず取り落とした。この時、偶然にも雷鳴が鳴り響き豪雨が始まった。劉備は箸を拾うと、
「あの雷で醜態をお見せいたしました」
曹操は笑って、
「大丈夫たる者でも、やはり雷が恐ろしいものであるのかの」
劉備の野菜作りは曹操の目をくらますものであったのに、この一件で、曹操は劉備への警戒を緩めた。

 

曹操は次の日も劉備を招いて酒を酌み交わした。そこへ袁紹(えんしょう)の様子を探りに行っていた者が戻ったとの知らせががありはその者を呼んで結果を訪ねた。
「公孫さん(こうそんさん)は既に袁紹によって打ち破ました」
との言葉に、劉備は咳き込んで仔細を訪ねた。
公孫さんは袁紹に追い詰められ、自害して果てたと言うことだった。その一方で帝を僭称していた袁術が、贅沢に耽り人心ことごとく離れる有様で、よって袁紹に帝号を譲ろうとしているとのことだった。袁紹は玉璽を所望し、袁術は自らそれを届けるとのことだった。
「この両名が手を結べば面倒なことになります。丞相には早急に手を打たれるのがよろしいかと存じまする」
劉備はこの話を聞いて、公孫さんが彼に施してくれた昔日の恩を思い出し、また趙雲の身の上などを案じたが、同時に「脱出するのは未だ。今を逃しては二度と機会はあるまい」と考え、席を立って言った。
「袁術が袁紹を頼りに行くというのであれば、徐州を通るに違いがありません。わたくしに一軍をお貸しいただければ、途中で遮って手取りにしてみせましょう」
「では明日帝に申し上げて、すぐにでも打ち立たれるがよろしいであろう。

 

翌日、劉備が帝においとまを告げると、帝は涙ながらに見送った。
出発してから関羽、張飛(ちょうひ)が尋ねた。
「兄者、今度の出陣はどうしてこうも急がれたのでござるか」
「これまでのわたくしは曹操の手中で自由を縛られておった。今こうして出てきたからには、魚が海に出て鳥が飛び立ったようなものじゃ」
と、劉備は関羽、張飛に命じて軍勢を急がせた。

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