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張飛策略をもて敵を捉え、劉備曹操への使者とする

劉備は王忠を監禁しておくように命じた。
関羽は、
「それがし、兄者に和睦のお心があるのを知って、わざわざ生け捕りにして参ったのでござる」
「おぬしはわたくしの心をよく理解しておる。わしも張飛(ちょうひ)を出さなかったのは、王忠を殺しては困ると思ったからじゃ。あの者は殺したところで何の得もない。生かしておいて和睦のために使ったほうが良いからの」
すると張飛が、
「関羽の兄貴が王忠を生け捕ったなら、俺は劉岱を生け捕りにしてこよう」
「殺したりしてはわたくしが困るからな」
「もし殺したら、俺の首をやる」

 

さて劉岱は王忠が捉えられたのを知って、陣を固めて出ようとしない。張飛は連日挑発したが、劉岱は相手が張飛と知ってますます出ようとしなかった。張飛は数日しても劉岱が出てこないので、一計を講じた。
まずその夜に夜討ちを掛けると陣中に触れを出させておいて、昼の間は酒に溺れた振りをして、部下の些細な罪を大げさに咎め、散々に打ちのめした上で、
「今夜出陣するとき、貴様を血祭りに上げてやる」
と脅した。その上で密かに他の者に言いつけ、その兵士を逃げさせた。兵士は縄を解かれると、一目散に劉岱の陣中に駆け込んで夜討ちの事を全て話した。劉岱はその兵士が全身に重傷を負っているのを見てその言葉を信じ、返り討ちにする体制を整えた。しかし張飛は兵を密かに敵陣の背後に回らせておいて、合図で一斉に責めかかった。張飛は自ら劉岱の退路を断ち、ただ一合にして劉岱を生け捕りにした。これを見て他の者どももすべて降参した。この旨直ちに徐州の劉備に知らせれば、劉備は、
「張飛はこれまで乱暴ばかりやってきたが、こういう策略を用いるようになれば、わしも安心じゃ」と関羽に言い、自ら場外に出迎えた。
「兄貴は俺を乱暴者だと言ったが、これでどうだ」
「わたくしにあそこまで言われては、そなたも策略を使わぬ訳にはゆかなかったのであろうが」
張飛は陽気に笑った。
劉備は劉岱が縛り上げられたのを見て、慌ててその縄を解き、
「大変ご無礼つかまつりました。平にご容赦下さい」
と言って徐州の場内に迎え入れ、王忠と共に二人をもてなした。
「丞相はわたくしが謀反を企てていると誤解され、お二方を差し遣わされましたが、それがし丞相より大恩に預かった身。恩を仇で返すような真似をしますでしょうか。お二方におかれましては許都にお立ち帰りの上、わたくしのためにお取りなし下さいませ」
「命を助けられたご恩、何で忘れましょう。丞相には必ず我らよりお執り成しをいたしましょう」
劉備は厚く礼を述べ、翌日二人に軍勢をそっくり返して城外に送り出した。

 

関羽、張飛は口を揃えて、
「曹操は必ずやってきますぞ」
と言うと、孫乾(そんけん)も、
「曹操に備えて陣を整えておくのがよろしいでしょう」
と言う。劉備はこの言を聞入れて、軍勢を分けて守備に備えた。

 

さて、劉岱、王忠が帰京して曹操に劉備に謀反の心のないことを言上すれば、曹操は怒って、
「よくも恥をさらしおったな。貴様ら如きは生かしておいても約に立たぬ」
と罵り、側の者に斬るように命じる。さて二人の命はどうなるか。それは次回で。

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