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董承吉平と曹操討伐を論じ、密議漏れる

さて、董承(とうしょう)は、劉備の去ったあと同士らと密議をこらしてきたが、これといって良い案も浮かばないまま時間だけが過ぎていった。そして曹操の横暴がますます盛んになるのをみて、心労のため病気になった。帝は董承が病に罹ったとお聞きになり、吉平(きっぺい)という、名医を遣わせた。吉平は董承の看病をしながら、董承が時折ため息をついているのに気が付いたが、理由を尋ねられずにいた。
ある日、吉平が帰ろうとするところを董承は呼び止めて、二人で酒を酌み交わした。すると董承は疲れを覚えてそのまま眠ってしまった。

 

「劉表が袁紹と手を組んで五十万の兵を起こし、また、馬騰(ばとう)殿は軍勢七十二万を起こし、北方より殺到しております。曹操は許都にある軍勢を駆り出し、城内は全くの空になってにいおります。我らの手勢を集めれば千人あまりにもなりましょう。今宵、取り囲んで押し入ろうではありませんか」
董承は大いに喜んで、手勢を集めて丞相、府に一斉に乗り込んだ。そして曹操を一刀のもとに斬り棄てると、そこで目が覚めた。なんと今までの事柄は夢だったのである。

 

そこへ吉平が進み出て、
「あなたは曹操殿の命を狙っているのですか」
寝言を聞かれた 董承は顔面蒼白、声も出ない有様である。
「董承殿、落ち着いてください。わたくしは一介の医者に過ぎませんが、漢王朝を思う心はと同じです。もしわたくしでお役に立てることがあれば、一族皆殺しとされて、後悔などいたしません」
そこで董承は詔を取り出して吉平に読ませ、
「いまだに謀がならずにいるのは、劉備殿と馬騰殿が許都を離れてしまったため、手の施しようがないのじゃ。わしの病はその心痛から来ておる」
「董承様のご心痛は無用でございます。曹操の命はすでにわたくしの手中にございます。曹操には頭痛持病があり、痛みだすとすぐにわたくしを呼びます。近々呼ばれることがありましょうから、その時毒を一服盛るだけで、命を取ることができます」
「おお、その時には、貴公こそ漢王朝第一の功臣となられましょうぞ」
こうして吉平が帰り、董承が喜びを抑えて奥に入ると、下僕が妾と物陰で密通しているのが目に入った。董承は大いに怒り、二人を殺そうとしたが、夫人から許してやるように頼み込まれたので、それぞれ棒で打ち据えて、空部屋に閉じ込めた。下僕はこれを恨みに思い、その夜のうちに錠をねじ切り、曹操の館に駆け込んで、一大事でございますと訴え出た。そして曹操に、
「馬騰ら五名が主人の家で度々何かの相談をしておりますが、丞相のお命を狙っているに違いありません。先程は吉平も指を噛み切って誓を立てておったのを、この目で見ております」
と訴えでた。曹操は彼を屋敷の中に匿っていたが、董承は彼が逃げただけと思っていたので、特に行方を探そうとはしなかった。