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関羽三つの約束をもって曹操に下る

関羽は張遼の言葉を受けて、
「貴公は今三つの利点を挙げられたが、ならばそれがしにも約束していただきたい三つのことがある。もし丞相が聞き入れてくれるのなら、おとなしく武器を棄てよう。聞き入れなれぬ時は罪を犯そうとも命を棄てよう」
「その三つとは、如何なるものかお聞かせ願いたい」
「一つはそれがしは漢王朝をお助けしようと立ち上がったものゆえ、それがしが降るのは漢の天子であって曹操ではないこと。二つ目は、兄嫁の御所には如何なる者も立ち入ることを禁ずること。三つ目は、兄者のご所在が明らかになり次第、たとえ千里万里の遠方といえどもただちに馳せ参じるということ。この三つの内一つでも欠ければ降参はしない」
張遼はこれを承知して曹操のもとへ立ち帰り、関羽の言葉を伝えた。
「劉備が見つかり次第立ち去るというのでは、彼の面倒を見てやっても意味がないではないか。それは承知できぬ」
「劉備は関羽に厚く恩をかけてやったに過ぎませぬ。丞相がそれにも増して、その心を掌握されれば、いかな関羽といえ従わぬはずがありません」
「なるほど。ではその条件を飲んでやろう」
こうして関羽は曹操に見参した。
「敗軍の将の命をお救いくださいましたご恩、厚く御礼申し上げます」
「関羽殿の忠義にはつねづね感心しておったが、こうしてお会いすることができ、嬉しく思うぞ」
「張遼殿を通じて申し上げた三つの約束についてはお間違いございませんな」
「わしは約束を破るような真似はせん」
「それがし、劉備様のご所在が分かり次第、火の中水の中であろうと御元に参る所存でございますが、その節にはお暇乞いにもあがれぬやも知れず、その節は平にご容赦くだされ」
「劉備殿がご存命とあればそなたの良いようにすればよかろう」
関羽は平伏して礼を述べた。

関羽が許昌に到着して以来、曹操は彼を大層丁重にもてなし、三日ごとに小宴会、五日ごとに大宴会を開いた。また、十人の美女を側使いとして贈ると、関羽は彼女たちを兄嫁に仕えさせた。

 

ある日、曹操は関羽の着ている陣羽織が相当古くなっているのを見て、高価な錦の陣羽織を贈ったが、関羽はそれを受け取ると、下に着込んで上には下の古いものを身に付けた。
「関羽、そう邪険にすることはないではないか」
と、曹操が笑うと、
「邪険に致すわけではござらぬ。この陣羽織は劉備様より賜ったものゆえ、これを着ておりますと兄者のお顔を見るような心地がするのでございます」
「まことの義士とはそなたのような人物を言うのであろうな」
と曹操は感嘆したが、内心は面白からず思っていた。