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劉備一命取り留め、文醜と共に出陣す

さて袁紹(えんしょう)が劉備(りゅうび)を斬らせようとしたとき、劉備がすっと前に進み出て、
「わたくしは曹操(そうそう)に敗れて以来、弟たちの生死すら分からずにいる次第です。天下に似た者は数多くおり、赤い顔に長い髭だからと言って、関羽(かんう)とは限りますまい。どうぞご深慮下さい」
袁紹は自分の考えを持つ人間ではないので、劉備の言葉に納得し、再び劉備を上座に据えた。そして改めて顔良(がんりょう)の仇討ちについて作戦を謀った。するとひとりの武将が歩み出て、
「顔良はそれがしが兄弟同然に親しくしていた者。それがし仇を打たずにはおられません」
劉備がその人を見れば、文醜(ぶんしゅう)である。
袁紹が大いに喜び、
「そなたでなければ顔良の仇は討てぬ。十万の兵を引いて、すぐに黄河を渡り曹操(そうそう)を討って参れ」
と言うと、沮授(そじゅ)が、
「それはなりませぬ。今しばらくは軍勢を分けて官渡に兵を出しておくのが上策でございます。軽々しく黄河を超えたりしては、もし味方に不利な状況になった時全軍無事には帰れませぬぞ」
袁紹は怒って、
「そなたらがそのようなことを申すから、志気が乱れいたずらに日々を費やし大事を妨げておるのじゃ。『兵は神速を尊ぶ』と申すことを知らぬのか」
沮授は退出して、袁紹を見限り、その後は病と称して引きこもってしまった。
劉備が、
「わたくしは数々の御恩を蒙りながら、何一つそれにお報いすることが出来ずにおります故、この度は何卒文醜将軍に同行することをお許し下されたい。都のご恩徳に応え、一方で関羽の消息を探って参りたくもございます」
と言うと、袁紹は喜んで文醜に劉備と共に先鋒を務めるように命じたが、文醜は、
「劉備殿は敗戦を重ねてきた大将で、役に立つとは思われませぬ。しかし、殿の仰せであれば、三万の軍勢を分けて後詰をさせましょう」

と言い、文醜と劉備は出陣した。

 

さて曹操は、関羽が顔良を斬ったのを見てますます感服た。そこへ袁紹が文醜を大将に黄河を渡らせ、既に陣を取ったとの報せが届いた。そこで曹操はまず住民を安全な場所へ移しておき、自ら軍勢を率いて出陣することとした。その際、兵糧部隊を先行させ、軍勢は後に続くようにした。
そのうち曹操は後詰の軍中にあって、先方で声が上がったのを聞き、急いで人を遣わせれば、文醜の軍勢が攻めて来たので、味方は兵糧を棄てて逃げ散ったとのことだった。
曹操は鞭を上げて南側の丘をさし、
「ここにしばらく避けよう」
と言い、曹操は兵士たちに鎧をとって息抜きをし、馬をすべて放しておくように命じた。