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関羽書状に涙し、曹操と袂を分かつ

そこで関羽が今までの事を詳しく話して聞かせれば、孫乾は、
「最近、劉備様が袁紹のもとにおられると耳にしたので、お膝下に馳せ参じようと思っておるものの、中々その機会がなく時間ばかりを無駄にしておりました。この黄巾賊の残党は袁紹に下って曹操を攻めようとしております。幸いにも関羽殿がここにおいでになられたので、この故をお知らせ致すべく、それがし間者に名乗り出たのでござる。明日こちらの軍勢は負けたふりを致しますから、関羽殿は奥方をお連れして袁紹のもとに参り、劉備様にお会いなさりませ」
「兄者が袁紹のもとにいるおられるならば、それがしはすぐさま参る。しかし、それがしが袁紹の大将二人を斬ったので、袁紹が許さないのではないか」
「それでは、それがしが先に袁紹殿の様子を探って参り、もう一度関羽殿にお知らせいたしましょう」
関羽は、
「兄者に会うためとあらば、それがしは死の危険を冒してでも駆け参じる」
と誓うと、曹操に別れを告げることとした。

 

一方、曹操も劉備の所在について情報を得ていたので、曹操は張遼に関羽の考えを探らせた。張遼はさりげなく、
「劉備殿が袁紹のもとにいらっしゃると分かった今、貴殿はあちらに参られるおつもりか」
「その通り。貴公より丞相(じょうしょう)に良いようにお取次ぎ致して下され」
張遼が関羽の言葉を曹操にそのまま伝えると、
「よし、わしに考えがある」
と曹操は言った。

 

さて関羽が考え込んでいる所に、突然人が訪ねてきたとの知らせがあった。招き入れてみると、見たこともない人である。
「失礼だが、どなたにおわすか」
「それがし袁紹殿に使える者でござる」
関羽は大いに驚き、急いで身の回りの者を退けると、
「わざわざおいでいただいたのは、何かご用件があってのことでしょう」
使者は一通の書面を取り出した。関羽が受け取って見れば、まさしく劉備の筆跡。急いで読んでみると、その大略は、

 

「我々は桃園にて生まれた日は別でも死ぬ日は共にあろうと誓い合った仲ではないか。今志半ばにしてこの約束を違え、恩義の絆を絶つということがあってよいものであろうか。貴公がもし功名を立て、富を得ることを考えておられるなら、それがし喜んで首を差し上げよう。書面にて思いを尽くせぬのが残念であるが、ひたすら返書を待つ」

 

関羽は読み終わると、
「それがしは兄者を忘れてなどいない。ご所在が分からなかったのじゃ。富のために昔の誓いを反故にするなど考えたこともござらぬ」
と号泣した。
「それがし曹操に別れを告げ、兄者の奥方々をお連れして馳せ参じよう」
と言った。それを聞いた使者は袁紹のもとに帰っていった。
関羽は二人の兄嫁にこのことを知らせ、曹操に暇乞いをするために丞相府に向かった。曹操はその意図を悟ると、門に来客断りの札をかけた。関羽はむなしく立ち帰って、以前からの従者たちに、車の準備を整え、いつでも出立できるようにしておく事を命じた。また、曹操から拝領した品々は全てそのまま残して、一品として持って行くことがないよう言いつけた。
翌日、再び丞相府へ暇乞いに行ったが、門にはまた断り札が掛かっていた。こうして何度行っても曹操と会うことができないので、張遼に取次ぎを頼ものうと家を訪ねてみれば、張遼も仮病を使って会おうとはしない。そこで関羽は曹操に暇を告げる書面をしたため、人を遣わして丞相府に届けさせた。そして己は曹操から贈られた財宝を全て蔵に収めて、二人の兄嫁に車に乗っていただくと、赤兎馬に乗り許都を去った。

 

さて、曹操が関羽をどうしようかと協議しているところに、関羽からの書面が届いた。ただちに読んで、
「関羽が立ち去ったぞ」
と大いに驚いたところ、一人の大将が進み出て、
「それがし関羽を捕まえてきましょう」
皆が見れば、将軍の蔡陽(さいよう)である。さてこの先どうなるか。それは次回で。