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曹操 関羽を讃え 錦のひたたれを贈る

蔡陽(さいよう)が関羽(かんう)を追おうとしたのを、曹操(そうそう)は、
「旧主を忘れず立ち去り際を明らかにするやりよう、まことに見事じゃ。そちたちも見習うように」
と言って、蔡陽を叱責し、追討ちを許さなかった。程c(ていいく)が、
「丞相(じょうしょう)の厚い待遇にも関わらず、暇乞いにも参上せず、無礼な書面一通で済ませるとは、たいそう無礼であります。また、もし関羽が袁紹の下に走ったりすれば、虎に翼を与えるようなものです。ここは後を追って彼を討ち取り、後の禍根を絶っておくべきでしょう」
と言うと、曹操は、
「劉備が見つかり次第、彼が暇を告げるのは約束したこと。一旦承知した以上、破ることはできぬ」
と言って、追うことを禁じた。その上で張遼(ちょうりょう)に向かい、
「関羽は与えた贈り物を残して去ったが、財物や位にも心を動かされないとは、立派なものじゃ。恐らくまだそう遠くへは行っておるまい。わしは見送りに行きたいから、そなた先に参って彼を引き留めておいておいてくれ」
張遼は命令を受けて単騎で先発し、関羽を引き止めた。関羽は従者に命じて兄嫁が乗る車を急がせ、単騎立ち止まった。そして曹操が数十騎を従えて追いつくと、
「関羽殿、この突然の旅立ちはいかがなされたかな」
と問うた。
関羽は馬上で身をかがめ、
「この度兄者が河北の袁紹(えんしょう)のもとにおることを知りましたので、このように急いだものにございます。当初のお約束を思い出して下さりますようお願い申し上げます」
「わしは前言を覆すようなことはせぬ。ただ将軍に餞別の品を受け取っていただこうと思って参ったのじゃ」
と、錦のひたたれを一人の大将に命じて彼の前に捧げさせた。
関羽は曹操の心を計りかねていたので、馬から下りず、薙刀でそれを受け取ると、

「引出物、ありがたく頂戴つかまつります。またお会いすることもございましょう」
と礼を述べると、そのまま車を追って立ち去った。
「なんと無礼な。なぜ手捕りにされないのですか」
許ちょ(きょちょ)が憤然としたが、曹操はそれを諌め、
「彼はただ一騎、こちらは数十騎。疑うのは当然じゃ」
こうして曹操は一同を従えて城に帰った。

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