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張飛 怒髪天を突き 関羽 蔡陽を斬り疑いを晴らす

一行は行くこと数日、ひとつの山城が見えてきた。関羽が土地の者にこう尋ねた。
「ここは何という土地じゃ」
「ここは古城と申しますが、半年ほど前から張飛(ちょうひ)と言う名の将軍が城からお役人様を追い出して陣取っています。今では軍勢を四、五千も抱えていて、もうこの辺一体では歯向かうものもおりません」
「おお、張飛の居所が分かったぞ」
喜んだ関羽は孫乾を知らせに送り、二人の兄嫁を迎えに来るよう伝えさせた。

 

さて張飛と言えば劉備、関羽と離れ離れになったあと、山の中にひと月余り住んでいたが、劉備の消息を探ろうと山を出て、たまたま古城に通りかかった。そこで兵糧を借用しようとして城に入ったが、役人が承知しなかったので、怒った張飛は役人を追い払い古城を乗っ取っていたのである。

 

この日、孫乾が張飛の元を訪れ、今までの経緯を説明すると、張飛は目を怒らせ鎧を身に付け、矛を取って馬にまたがるなり、怒声を上げながら関羽に斬りかかった。
関羽は仰天して飛び退き、
「弟よ、何をするか。桃園の誓いを忘れたか」
「それはこちらの台詞よ。どの面下げてのこのこ現れやがった」
「それがしを義理知らずだと言うのか」
「そうよ、貴様は兄貴を裏切り曹操に付いて金銭を稼いでいやがるんだろう。今度は俺を丸め込みに来たんだろうが、そうは問屋が下ろさねぇ。さあ来い、どちらかが死ぬまでやりあってやろうじゃねえか」
「弟、勘違いしないでくれ。お前を捕えるなら、軍勢を連れてきているはずじゃ」
関羽の言葉に、張飛は関羽の背後を指さして、
「あの通り、軍勢がやってきているじゃねえか」
関羽が振り返れば、正に曹操の軍勢が追ってきている。
「さあ貴様、これでもしらを切るか」
と張飛が矛をしごいて突きかかる。
関羽は慌てて、
「ま、待て、弟。わしがあの軍勢の大将を斬って、まことの心を見せよう」
「よし本当に真心があるか見極めてやる」
関羽は曹操の軍勢に向き合うと、馬を乗り出してきたのは、蔡陽である。

「おのれ貴様、よくもわしの甥に手をかけてこんなところに逃げ込みおったか。引っ捕えてやる」
関羽は物も言わず、薙刀を一閃、蔡陽の首は地面を転げ、兵士たちは逃げ出した。関羽は雑兵を捕まえると、張飛の前に連れていき、これまでのことを細々と説明させた。これを聞いて張飛はようやく疑念を解いた。
そこへ突然城内の兵士がやって来て、
「南門に向かって十数騎を引き連れた者がやって来ます。何者かは分かりません」
と知らせてきた。