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何進董太后を毒殺し、十常侍の誅殺を企てる

百官が皆万歳をとなえて即位式を終わると、袁紹は蹇碩を捕らえようと後宮に踏み込んだ。蹇碩は慌てて花園に逃げ込んだところを、中常侍の郭勝(かくしょう)に殺され、蹇碩の指揮下にあった親衛軍は全て降参した。
この機に宦官を皆殺しにすることを袁紹が何進に進言すると、張譲(ちょうじょう)らは何太后(何皇后のこと。霊帝が亡くなった為太后となった)の元に駆け込んで訴えた。
「もともと大将軍を陥れようとしたのは蹇碩の独断で、わたくし共は全く知らないことです。大将軍は今、袁紹の言葉を聞き入れてわたくし共を皆殺しにされようとしております。なにとぞ皇太后のお力でお救い下さい」
何太后は中常侍に安心するように言うと、何進を呼び出して言った。
「わたし達兄妹は元々は卑しい出自ではないですか。今こうしていられるのも張譲たちのおかげですよ。蹇碩が悪事を企んで既に滅びたというのに、宦官を皆殺しにするなど一体誰に唆されたのですか」
何進は何太后の言いつけに逆らえず、蹇碩の一族のみを滅ぼすことに決めた。
「そんな中途半端なやり方では、先々禍いの元になりましょう」
と袁紹が言ったが、何進は聞き入れない。仕方なく一同は引き下がった。

 

次の日、何太后は何進に行政の権限を与え、その他の身内にも官職を与えた。
董太后は張譲らを後宮に呼び出して、
「何太后は元々わたしが引き立ててやったのです。それが今では我が子を帝位に即け、朝廷の内外を腹心で固めて、好き放題に振舞っています。あれを押さえるにはどうしたらよいでしょう」
と相談すると、張譲が言った。
「董太后が政務を行なわれ、協皇子様を王に任じられ、董太后様のご兄弟の董重(とうちょう)様に高位を授けられ、我らを重く用いて下されば、全て御心のままになるでしょう」
董太后は喜んで、その策を採用した。皇子協を陳留王(ちんりゅうおう)に封じ、ひと月あまりする内に、権力は全て董太后のものとなった。何太后は董太后が権勢を振るうのをみて、ある日宴の席を設けて董太后を招き、そこで申し上げた。
「わたくし共は女の身にございます。自ら政治を行なうのは好ましくないと思います。朝廷の事々は大臣や元老に任せて、わたくし共は奥に引きこもっているのが国家の幸いと存じます」
董太后は大いに怒り、
「兄の何進の勢いが多少強いからといって、そのようなとがよく言えたものです。わたくしが一言いえば、そなたの兄の首を斬ることなど造作も無いこと」
何太后も怒って、董太后と激しく言い合いになったところを、張譲らが取り成した。

 

何太后は、その夜ただちに何進を呼び出してこのことを告げた。翌日、朝廷で董太后を宮中から追い出すことに決めた。また、董重の屋敷を取り囲ませ、自害に追い込んだ。その後、董太后も毒殺した。張譲らは董太后一門の没落を見て、金銀財宝を何進の弟の何苗(かびょう)と母親に贈り取り入った。こうして十常侍は再び何太后の側近として用いられるようになった。

 

その後、何進は病気と偽って朝廷に出なかったが、袁紹が訪ねてきて言うに、
「張譲らが殿が董太后を毒殺したと噂を広めています。今の内に宦官を始末しておかなければ、後々大きな害になること確実です。躊躇する時間はありませんぞ」
さて、この事を張譲に伝える者がいたので、張譲らは何苗に多額の贈り物と共に訴えた。何苗は何太后のもとを訪ねて十常侍の身の安全を図るよう進言し、何太后はその言を受け入れた。まもなく何進が参内し、宦官を誅する企てを奏上した。しかし何進は元々決断力に乏しい男であるから、何太后に諫められ、すごすごと退出した。
袁紹が首尾を聞くと、何進は何太后に止められた旨を話す。それを聞いて袁紹は、
「全国の英雄に兵を率いて上京するように呼びかけ、宦官どもを皆殺しにさせましょう」
と進言する。
「それは良い考えだ」
何進はすぐさま各地へ檄文を飛ばし、都へ呼び寄せようとした。その時文書係の陳琳(ちんりん)が、
「それはなりません。今大将軍様は何事も思いのままになる権威をお持ちではないですか。もし、宦官を誅しようとされるのであれば、ただ一言に命じるだけで兵は従うでしょう。それを外から大将を招くとあっては、英雄豪傑がむらがり集まって、かえって乱を招くようなものです」
「臆病者めが」
と何進が笑い飛ばした時、そばで手を叩き大声に笑うものがある。
「このような簡単なことに、何を大げさな」
一同が振り返ってみれば、誰であろう曹操である。さて曹操は何を言い出すか。それは次回で。