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孫策 于吉を捕らえ わらの上に 首をはねる

使者は袁紹が孫策と手を結んで共に曹操を攻めようと考えていることを語った。孫策は大いに喜び、大将たちを集め、城門のやぐらに宴会の席を設け、使者をもてなした。すると酒盛りの最中に大将たちが次々と降りていくので、側の者に訳を訪ねたところ、
「于吉(うきつ)仙人がこの下を通ったので、拝みに行かれたのでございます」
すると孫策は怒って、
「人心を惑わせる奴め」
と、 于吉を引っ捕えるように命じる。連れてこられた于吉を目の前にして、
「貴様はなぜ人心を惑わせるのか」
と問うと、 于吉は、
「手前はある日すべての人の病を癒す方術が書かれた書物を手に入れました。これを得てからは手前は天に変わって人々の苦しみを救って参りましたが、今だかつて人からお礼の物を受け取ったことがありません。人身を惑わせるとの仰せは解せません」
「では食物や衣類はどうしている。さては貴様は黄巾賊の一味だな」
と、左右の者に斬って棄てるように命じた。臣下らはこぞって命乞いをした。孫策は、
「お前たちは皆学問をしてきた者なのに、こういったことが迷信であることが何故分からないのか。このような迷妄を覚まさせ邪教を禁じようと思うからこそ、わしは于吉を殺そうと思っておるのだ」
と言う。これを聞いて呂範(りょはん)が言った。
「それがし、于吉仙人が雨風を呼ぶことができるのを知っておりまする。ちょうど今日照りに悩んでおります故、雨乞いをさせて罪の償いとさせてはいかがでございますか」
孫策は、
「ならば試してみよう」
と言って、于吉を獄中から引き出させ、雨乞いをさせた。

「もし牛の刻になっても雨が降らねば、于吉を焼き殺せ」
と命じ、前もって人に乾いた柴を積み上げさせておいた。牛の刻が近づくと、にわかに突風が起こり、彼方から暗雲が集まってきたが、
「もはや牛の刻であるのに、雲が集まるだけで雨は降らないではないか。妖術師に違いない。火を放て」
と言い、火を起こさせれば、炎がめらめらと立ち上った。その時、雷鳴一声、稲妻が飛び交い、豪雨となってあっという間に道は河となり、谷川は溢れ出た。于吉が大声で叫ぶと、雲が消え去り再び太陽が姿を現した。こうして様子を眺めていた役人や人々は、于吉を芝の山から助け出し、縄を解いて感謝を捧げた。孫策は役人や人々が着物が汚れるのも構わずに水たまりの中にぬかずいている姿をみて怒り、
「雨は天地のなせる技だ。この妖術使いめがそれを利用しているのを、そなたたちはなぜ惑わされるのか」
と、左右の者にすぐさま于吉を斬るように命じた。兵士はやむなく于吉の首を一刀のもとにはねた。孫策はその屍を市場に晒させ、邪法を広める者の見せしめとした。