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荀ケ 書面にて 曹操を励ます

さて曹操は八月のはじめから官渡に陣を布いていたが、九月も終わりになると、兵士たちも次第に疲れ、兵糧も心細くなってきた。そこで陣払いをして都に戻ろうかと思ったが、なおも決心がつかない。そこで都にいる荀ケの意見を聞いてみようと書面を届けさせた。その返事の大意は次の通りである。

 

今陣営を進めるべきか退くべきかを決めよとの仰せならば、愚考いたすところ、袁紹は全軍を官渡に集めて曹操様と勝負をつけようとしています。曹操様が少ない軍勢で正面から対峙された場合、これを打ち破ることができなければ、天下の大事でございます。しかし袁紹は多勢とはいえ兵士の使い方を知らない者であるので、曹操様であれば破ることはいとた易いことでしょう。曹操様におかれましては、今は辛抱のときでございます。勢いがのったところには必ず変事が起こるものです。その時こそ奇策を用いるとき、断じて機を失してはなりません。ひたすら曹操様のご明察をお待ちしております。

 

曹操は書面を得て大いに喜び、将士に力を尽くして死守するよう命じた。すると徐晃(じょこう)の配下が袁紹軍の間者を捕らえてきた。徐晃が敵陣営の様子を聞きただすと、
「間も無く大将の韓猛(かんもう)殿が兵糧を運んで来られます」
との答え。徐晃がただちにこの旨を曹操に知らせれば、荀攸が言うのには、
「韓猛は匹夫の勇があるのみ。道中を襲い兵糧を絶ってしまえば、敵軍はおのずから乱れましょう」
と言うので、曹操が、
「誰を差し向けたら良いと思うか」
と問うと、
「徐晃殿がよろしいかと存じます」
との答え。
こうして曹操は徐晃に命じ手勢を率いて先行させ、張遼、許ちょに後詰をさせた。その夜、韓猛は兵糧車数千輌を護送して袁紹の陣へ向かっていたが、途中の山あいで徐晃が手勢を率いて立ちふさがったので、馬を躍らせて斬りかかった。徐晃が迎え撃って斬り合いとなる隙に、徐晃の手勢が兵糧を焼き払った。袁紹は陣中からその火の手が上がるのを眺め、何事かと驚いていると、逃げ戻った兵士が兵糧が襲われたと伝えた。
袁紹は大いに怒って、陣地に帰った韓猛を斬ろうとしたが、皆の者が命乞いをしたので、雑兵に格下げした。