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曹操 兵糧乏しく 許攸これを知る

袁紹は鳥巣に兵糧を蓄えていたため、大軍をもって鳥巣を守り、審配を帰らせ鳥巣へ兵糧を滞りなく送らせるように手はずを整えた。
審配が命を受けて陣を去ると、袁紹は大将の淳于瓊(じゅんうけい)に軍勢二万を率いて鳥巣を守るように命じた。この淳于瓊は気性が激しく酒好きで、多くの兵士から恐れられていた。そして鳥巣に着くなり、昼夜諸将と飲み暮らしていた。

 

さて、曹操の軍勢は兵糧が乏しくなったので、都の都に急使を送り、早急に兵糧を整えて送り届けるように荀ケに命じた。使いの者は書面を持って出立したが、いくらかも行かないうちに袁紹の軍勢に捕らえられ、幕僚の許攸(きょゆう)の前に引き出された。この許攸は昔曹操と交流を持ったことがあるが、この時は袁紹のもとに仕えていた。この時、使者がもっていた曹操の兵糧を督促する書面を持って袁紹の前に出て、
「曹操は官渡に陣を敷いて我々と対峙すること久しくなりますが、許昌が手薄になっているに違いありません。もし今すみやかに一軍をもって許昌を急襲いたしますれば、許昌を落とし曹操を捕えることができるでしょう。曹操の兵糧がすでに尽き果てた今こそ、前後から攻め立てる好機でございます」
と言った。しかし袁紹は、
「曹操は術策にたけた奴だ。この書面も我らを誘い出すための計略じゃ」
と聞き入れない。なおも許攸が説得を重ねているところへ、審配からの使者が来て書面を差し出した。その意は、

 

許攸が以前人民から賄賂を受け、息子や甥たちが重い年貢を取り立てて懐に入れるのも見てみぬふりをしていました。今はその息子と甥を捕らえて獄に下しております。

 

これを読んで袁紹は大いに怒り、
「不届き者めが。どの面下げてわしに目通りをしたのだ。貴様は曹操と顔馴染みゆえ、おそらく、今度も奴に袖の下をもらって向こうの回し者となり、我が軍をそそのかしに来たのだろう。本来ならこの場で打首にするところじゃが、今は保留にしておく。さっさと退がれ。今後は目通りを許さぬ」
退出した許攸は、天を仰いで、
「忠言が聞き入れられぬか。息子や甥を審配の手にかけさせてしまったからには、もはや領地の人に会わせる顔がない」
とため息をつくと、剣を抜いて自刃しようとした。側にいた者たちがその剣を奪い取って、
「短気な真似はおよしなされ。袁紹も直言を聞く耳を持たない以上、この先曹操に捕らえられるのは決まったようなもの。貴公は曹操と昔馴染、暗君を捨てて明君に支えればよいではござらぬか」
と行った一言に、許攸は目が覚めるような思いがした。こうして許攸は曹操の下へ投じることとなる。