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許攸 曹操に投じ 策を献じる

さて許攸はひそかに陣を出て、そのまま曹操の陣へ向かった。物陰に潜んでいた兵士に曹操への早々の旧友である旨を伝え取次ぎを頼むと、その時着物を脱いで休んでいた曹操は、履くものも履かず大喜びで出迎えた。そして許攸の手を取って陣屋に入ると、自分から先に拝伏した。
許攸はあわてて助けおこし、
「曹操殿は漢の丞相、それが市は無位無官の野人。そのようなことをされては、それがしが困ります」
「貴公とわしは昔馴染、礼を重んじるのに官位は関係なかろう」
「それがし主を見る目がなく、袁紹に仕えておりましたが、忠言は聞き入れられず、献策も取り上げられぬので、袁紹を棄て、昔日のよしむを頼りにこのように参上つかまつったもの。なにとぞお膝許に置いてくださいませ」
「なんの、貴公が来てくれたとあっては、もはや我が軍の勝利が決まったも同然じゃ。早速じゃが袁紹を破る計をお教え願いたい」
「それがしは、袁紹に、少数の軽装兵を用いて許都の隙をつき、前後より挟み撃ちするよう進言したのでござるが」
これを聞いて曹操は仰天し、
「もし袁紹が貴公の策を用いておったら、わしは破滅しておった」
「して、殿にはどの程度の兵糧が残っておりますか」
「一年はある」
許攸は笑って、
「そんなにはございますまい」
曹操は渋い顔をすると、
「半年分だけじゃ」
と答えると、許攸はすっと立ち上がり、つつと外へ立ちいで、

「それがし誠の心から参上つかまつったのに、殿は左様な偽りを申されるのか。それがし考え違いをしておりましたぞ」
曹操は後を追って、
「許攸、許せ。実を申せば、兵糧はもはや三ヶ月分しかないのじゃ」
許攸は笑って、
「曹操殿は奸雄よと世に聞こえておりますが、なるほどそのとおりでござるのう」
曹操も笑って、
「戦にはいつわりはつきものと申すではないか」
と言い、許攸の耳元でささやいた。
「陣中には今月分の兵糧しかないのじゃ」
許攸、声を荒らげて、
「どこまでそれがしをたぶらかそうとなさるのか。兵糧はもうないではござらぬか」
曹操は愕然として、
「なんと、どうしてそれをご存知か」
許攸は曹操が荀ケに充てた書面を懐中より取り出した。
曹操は大いに驚き、
「これをどこでてに入れられた」

許攸が兵士を捉えたことを話すと、曹操はその手を取って、
「是非袁紹を破る策をご教授賜りたい」
「それがしの策をもってすれば、三日を待たずとして袁紹百万の軍勢を戦わずにして自滅させることができますが、お聞き入れ下さりまするか」
曹操は喜んで、
「是非ともお聞きしたい」
と言った。