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曹操 袁紹の居を尽き 沮授 陣中に涙する

許攸は曹操をしかと見つめると、
「さらば、袁紹は兵糧や兵糧車をすべて鳥巣に蓄えており、ただいま淳于瓊が守っております。彼は酒に溺れて何の備えも致しておりませんから、殿は少数精鋭の兵をよりすぐって、袁紹の武将を偽れせて、油断している好きに蓄えのすべてを焼き払いさえすれば、袁紹の軍勢は三日せずして崩れましょうぞ」
と言った。
曹操は大いに喜び、許攸を厚くもてなして、陣中に留めた。
あくる日、曹操は自ら精鋭を率いて鳥巣へ兵糧を襲いに行く支度をした。これを張遼が止めた。
「袁紹が兵糧を蓄えている鳥巣に、備えの抜かりがあるわけがございません。ご出馬はお差し控えくださいますようお願い申し上げます。許攸の言は疑わしゅうございます」
しかし曹操は聞き入れない。
「いやいや、許攸が参ったのは天のおつげじゃ。いまや我が軍の兵糧は尽き、とてもこのままでは長く持ちこたえられまい。もし許攸の策を用いらなかったら、座して死を待つようなものじゃ。それに彼が偽りを申したならば、ここに留まっているはずがないではないか。わし自身かねがね奇襲を望んでおった。今やらねばいつやるのだ。そなたも案じるな」
「袁紹が逆に我が軍の虚を襲ってくることも考えておかなければなりますまい」
曹操は笑うと、
「それについてはもちろん考えておる」
と言い、万全の体制で出陣した。

 

さて、沮授は袁紹によって陣中に監禁されていたが、この夜、星があまりに美しく輝いているので番人に庭に出してもらい、天を仰いだ。すると袁紹軍に災いが降りかかる天文が描かれていた。
大いに驚いた沮授は、夜中にかかわらず袁紹に目通りを願い出た。その頃、袁紹は既に酒に酔って寝ていたが、沮授が内密に知らせたいことがあるというので、招き入れた。
沮授が言うには、
「ただいま天文を見ていましたところ、賊軍が夜襲をかけるしるしが出ております。鳥巣の兵糧にご用心が肝要と存じます。ただちに屈強の兵と勇将を遣わして、曹操の計略を破られますよう」
袁紹、怒って、
「おのれ、罪人の分際で何をぬかす。人を惑わせる気か」
と一括し、沮授を出した番人を叱りつけて打ち首にしたうえ、再び沮授を押し込めさせた。沮授はあふれる涙をおさえながら、
「我が軍の寿命はもはや尽きた。わしのむくろもどこの土になるものかのう」
と嘆いたものであった。