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曹操 淳于瓊の耳鼻を削ぎ 袁紹 官渡へ兵を出す

さて曹操は夜道を兵を率いて進み、袁紹のとある陣の前を通りかかった。すると敵陣の兵がどこの所属かと質問してきたので、曹操は袁紹の将軍配下を名乗り、
「鳥巣の兵糧の警護に参った」
と答えた。兵士は見方の旗じるしを見て、露ほどにも疑わなかった。道中同じやりとりが何度もあったが、曹操は全て同じ言い訳を使い、ついに見破られることはなかった。鳥巣に着いたときは既に深夜に回っていたが、曹操は兵士に命じて火を掛けさせ、将校たちは陣太鼓を打ち鳴らして押しいった。
その頃、淳于瓊は武将たちと酒盛りをして幕中に酔い伏していたが、どっと上がった太鼓とときの声に、がばと跳ね起きて、
「何事か」
と言おうとしたところを、熊手に掛かって引き倒された。そこへ袁紹軍が兵糧を運んで帰って来、鳥巣に火の手の上がったのを見て、加勢に駆けつけた。曹操の兵士がこれを急報し、
「賊軍が後ろから参ります。軍勢を分けてお防ぎください」
と言うと、曹操は、
「皆の者、全力で前に進め。賊が背後に迫ったら、その時に戦えばよい」
と大喝したので、これを受けて諸将は先を競って斬り込んだ。またたく間に火の手が四方にまわり、袁紹軍の将は捕らえられ、兵糧はことごとく焼き払われた。淳于瓊は曹操の前に引き出されたが、曹操はその耳と鼻をそぎ、手の指を切り落とさせた上、馬の背にくくりつけて敵陣に送り返させて、袁紹を辱めた。

 

その頃、袁紹は幕中で鳥巣の方角に火が上がったとの報せを受けて、慌てて諸官を集めて協議を行い、救援を出そうとした。張こうが、
「それがし、高覧殿と加勢に向かいまする」
と言えば、郭図(かくと)が、
「それはなりません。今は曹操の陣営が手薄になっていることでしょう。まず陣営を襲うのが宜しいかと存じます」
「それは違いましょうぞ。知恵者の曹操が守りを怠っているはずがありません。必ずや留守を突かれた場合の対策を講じておりましょうぞ。いまもし曹操を攻め落とすことが出来なければ、淳于瓊らは虜とされ、我らも全て彼の手に落ちねばなりますまい」
「曹操は兵糧を奪うことに全力を挙げており、陣に軍勢を留めておくはずはございません」
と、 郭図は繰り返し曹操の陣営を襲うように提言した。こうして袁紹は張こう、高覧に五千の軍勢を与えて官渡の曹操の陣営を襲わせるとともに、鳥巣に一万の救援の軍を出した。

 

さて曹操は淳于瓊の手勢を蹴散らして、その衣類や身につけるものを奪うと、自軍の兵に袁紹軍の装いをさせた。そこへ袁紹が送り込んできた救援がやってきたので、味方のふりをして不意を突くと、散々に蹴散らした。そして袁紹のもとへ人を遣わし、
「援軍は既に曹操軍を追い払いました」
と偽りの報告をさせたので、袁紹はそれ以上鳥巣には軍勢を出さず、ひたすら官渡へ加勢をくりだした。