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何進天下の英雄を募り、策略を企ててかえって誅殺される

さて、曹操(そうそう)はその時何進(かしん)にこう答えた。
「宦官(かんがん)が権力を握り国を乱したのは今に始まったことではありません。この度は霊帝(れいてい)陛下が彼らをご寵愛の末に大権を授けられたために、このようなことになったのです。処分なさるのであれば、その元凶を除けば良く、一人の獄吏の手で事足ります。ましてや諸国の兵を借り集めるなど無用なこと。宦官を残らず誅殺しようとすれば、計画は必ず漏れ、仕損じることになるでしょう」
しかし何進は怒って聞き入れない。曹操は退出してから、
「何進こそ、天下を乱す者だ」
と呟いた。その何進は、その日の内に密使を諸国に出し、上京を促す命令を出した。

 

ところで董卓(とうたく)は、二十万の大軍を統べて、不届きな野心を抱いていた。この時何進の詔を受けて大喜びし、牛輔(ぎゅうほ)に後の守備を任せて、自らは李かく(りかく)、郭(かくし)、張済(ちょうさい)、樊稠(はんちゅう)らを伴い、軍を率いて洛陽を目指した。
その頃朝廷では、董卓の性が悪であることを主張し、いたずらに乱を招かない為にも都に入れないよう進言する者が盧植(ろしょく)の他何人もいたが、何進は聞き入れないので、多くの臣下は役職を棄てて去った。

 

張譲(ちょうじょう)らは何進が外州から兵を呼び寄せていると知ると、先手を打って何進を亡き者にしようと企てた。それは何太后(かたいこう)の名のもとに何進を呼び寄せるというもので、何進が宮廷に赴こうとすると、再び陳琳(ちんりん)が諫めた。
「この度のお召しは十常侍(じゅうじょうじ)の企みに違いありません。出仕はお控えください。必ず禍いにあうでしょう」
袁紹(えんしょう)、曹操も声を揃えて反対するが、何進は己の権力に溺れ状況が把握できていない。
「殿がどうあっても参内されるというのであれば、我らが兵士を率いてお供し、万が一に備えましょう」
と、袁紹。こうして袁紹、曹操はそれぞれ精鋭の兵五百名を選りすぐり、袁紹の異母弟である袁術(えんじゅつ)に命じて兵を指揮させた。袁紹、曹操は剣を携え何進の護衛をして行くと、宦官が詔を伝え、
「何太后は大将軍をお呼びである。他の者は立ち入ることはなりません」
と、袁紹らを阻んだ。
何進は楽観的に門をくぐり、そのまま進むと張譲、段珪(だんけい)が出てきて、左右にぴたりと寄り添った。何進は愕然としたが既に時遅し、張譲が何進に迫り、
「貴様なぞ元をただせばただの肉屋ではないか。我らが天子にお勧めしたからこそ今の栄華を味わうことが出来ているのだぞ。それなのに恩に報いるどころか我らの命を狙うとは何事だ。この不義理者め」
何進は慌てて逃げ道を求めたが、門は全て固く閉ざされている。その時十常侍(じゅうじょうじ)の手の者が一斉に現れ、何進を真っ二つにした。更に張譲らは何進の首を斬って壁の上から投げ落として、
「何進は謀反を企てた為、既に誅した。潔く降参する者は赦す」
と言い放った。
袁紹が大声で、
「宦官が大将軍を殺したぞ。悪党を滅ぼそうとする者は出て戦え」
と叫び、阿鼻叫喚の殺戮が始まった。