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董卓策を弄して呂布を義子とし、今上陛下を廃さんと企む

翌日、丁原が軍を率いて戦を挑んできたとの知らせに、董卓は怒って軍を率いて李儒と共に出陣した。両軍の陣がきまると、呂布が丁原に従って現れた。
丁原は董卓に指を突きつけ、
「貴様は少しの罪も無い陛下の廃立を口にするとは、朝廷を乱そうとの心だな」
と罵り、董卓が言葉を返す間もなく、呂布が馬を飛ばして斬りかかった。董卓は慌てて逃げると丁原軍が襲い掛かったので、董卓軍は大敗し、三十里ほど退いて陣を構えた。董卓は将軍達を集めて、
「呂布を手に入れることが出来れば何者も恐れることが無いのだが」
と言うと、その言葉に一人が歩み出て、
「殿、それがし呂布とは同郷の者です。彼は勇気があっても策がなく、利益の前には大儀を忘れる性格であることを知っております。それがし呂布を説き伏せ、味方につけさせてみせましょう」
董卓が大いに喜んでその男を見れば、皇宮の警護長を務める李粛(りしゅく)である。
「そなたはどうやって呂布を説き伏せようというのだ」
「殿のお持ちの名馬『赤兎馬(せきとば)』と金銀財宝、それにそれがしの舌をもってすれば必ずや呂布は殿の御前に馳せ参じるでしょう」
董卓は李粛に馬と財宝を与えると、呂布を引き抜く任を与えた。

 

李粛は贈り物を携えて呂布の陣を訪ねた。呂布は兵士らに通すように命じた。李粛は呂布を見るなり、
「久しぶりだな。その後変わりないか」
と声をかけた。呂布は頭を下げ、
「しばらくお目にかかりませんでしたが、今はどちらにおつとめですか」
「いまは皇宮の警護長をつとめておる。貴公が国家のために働くと聞いて『赤兎馬』という名馬を贈りに来たのだ」
呂布はその馬を見て大喜びし、
「このような名馬を頂いたからには、どのように御礼をすればよろしいでしょうか」
李粛は、
「わしは大義によって来たのだ。返礼など望んではおらぬ」
呂布は酒を出してもてなした。程ほどに酔いが回ったところで李粛が言った。
「貴公の実力を羨まない者はないわ。功名も富みも容易く手にすることが出来るのに、何故丁原の下について小さくなっているのだ」
「残念なことに名君に出会えないのです」
すると李粛は金や珠玉を取り出して呂布の前に並べた。呂布が驚くと李粛は周りの人間を退けて、
「これは董卓殿が貴公の実力を認めて、わしに命じて届けさせたもの。『赤兎馬』も実は董卓殿の贈り物だ」
「董卓殿がそれほどまでに俺を評価してくださっていたとは。俺は何でお礼をしたら良いのでしょう」
「そのお礼も非常に簡単なものなのだが、さて貴公に出来るかどうか」

呂布はじっと考え込んでいたが、しばらくして、
「俺は丁原を殺し、軍を率いて董卓殿に下ろうと思いますが、いかがでしょうか」
「貴公がもしそうしたら、この上もない手柄だ。が、やるならばすぐやらねばならぬ」
呂布は次の日に投降すると約束し、李粛は帰った。
そしてその夜の二更頃、刀を持って丁原の幕中に踏み込んだ。そして一刀のもとに丁原の首を斬り落とし、大声を上げて、
「丁原は人情と義理をわきまえぬ奴だから、俺が殺した。俺に従う者は残り、従わぬ者は去れ」
と叫べば、兵士はあらかた落ち去った。
次の日、呂布は丁原の首を持って李粛を訪ね、李粛は呂布を董卓に引き合わせた。董卓は大いに喜び、呂布を義理の息子とした。

 

李儒が早急に帝の廃立を進めるよう董卓に進言したので、董卓は百官を集め、呂布に命じて武装した兵士千名あまりを左右に立たせ、己は剣の柄に手をかけながら、
「今上陛下は愚かで気力が弱く、国家の主であることが出来ない。わしは今上陛下を廃して、陳留王を新しく帝に立てるつもりだ。不服な者はこの場で斬り捨てる」
群臣はみな恐れ、言葉を発するものもいない。そんな中袁紹が歩み出た。
「今上陛下はご即位されてから日も浅く、失態も何一つない。貴様がご正嫡を廃して庶子を立てようとするのは、謀反の心あっての事だな」
と反論した。董卓は怒って、
「わしのやる事に逆らう気か。貴様、この剣の切れ味を味わえ」
袁紹も剣を抜き、二人はにらみ合う。さて袁紹の命はどうなるか。それは次回で。