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王允曹操に宝刀を授け、曹操東南へ落ちのびる

「曹操殿はどのような策をお持ちか」
と、王允が問うと曹操は、
「以前からわたしが忠義を曲げて董卓に仕えていたのは、実は暗殺の機会を伺っていたのです。最近では董卓はわたしをよく信頼しており、わたしも彼に近づけるようになりました。王允殿は見事な刀を一本お持ちとのこと、それを貸していただけれは董卓を刺し殺してみせましょう」
「貴公がそのような決意をお持ちとは、天下にとってこの上ない幸せだ」
と、王允は宝刀を取り出して曹操に与えた。曹操は刀を受けると一同に別れを告げて立ち去った。

 

翌日、曹操は宝刀を携えて董卓の館に入り、董卓のもとに参じた。董卓は寝台に横たわり、側には呂布が控えている。
「曹操、遅いではないか」
「馬が痩せ馬なので速く進めないのでございます」
との問答に、董卓は
「呂布、曹操に良い馬を一頭選んできてやれ」
と言い、呂布は命を受けて出て行った。曹操はこれぞ董卓の運の納め時と、後から斬りかかろうと刀を抜き放った。その時、何気なく鏡に眼をやった董卓は、曹操が背中で刀を抜いたのを見て、
「曹操、何をするつもりだ」
と大声を上げた。この時ちょうど、呂布が馬を引いてやってきた。曹操は慌てて刀を持ち変えて跪き、
「わたしは宝刀を持っておりましたので、献上いたそうと思ったのです」
董卓が受け取ってみれば、曹操の言葉にたがわず見事な刀である。董卓は呂布に命じて納めさせた。董卓が曹操を連れて庭に下り、呂布の連れて来た馬を与えると、
「早速、試させていただきたいと思います」
と、曹操は馬を引いて館を出るなり東南の方向に一目散に逃げ去った。
呂布が、
「さきほど曹操は殿を刺そうとしていたように見受けましたが、見破られたのであのような態度に出たのではないでしょうか」
董卓も、
「うむ、わしもおかしく思っていたのだ」

そこへ李儒がやってきたので、董卓は経緯を話すと、李儒は、
「曹操は家族を都においておらず、一人で住んでいます。ただちに人を遣わして呼び寄せ、何事もなく参るようでしたら、刀を献上したのでありましょう。もし参らぬなら、必ずや殿のお命を狙ったものに違いなく、捕らえて尋問しなければなりません」
董卓はただちに獄卒四人を曹操のもとに差し向けた。しばらくして獄卒が帰ってくると、
「曹操は住居に帰らず、東門より乗馬にて逃げ去ってございます。門衛がとがめたところ、『董卓様より申し付かった緊急の用事』と申し、馬を駆って立ち去ったとのことです」
李儒は、
「曹操め、おじけづいて逃げ去ったのなら、お命を狙ったことに間違いございません」
董卓は大いに怒り、
「わしがあれほど目をかけてやったのに、よくも裏切りおったな」
「これは彼一人の考えではないでしょう。曹操を捕らえれば分かりましょう」
と李儒が言い、董卓は各地へ曹操の人相書きと逮捕状を発して、生け捕りにした者は賞金千金、官職を与え、かくまった者は同罪にすると命じた。