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曹操敗走し、孫堅玉璽を手に入れる

曹操は慌てて馬に乗り逃げようとするところを肩に矢を受けた。そのまま馬を駆り立てようとしたところを二人の兵士が一斉に曹操の馬を狙ってやりを突きたて、曹操は転げ落ちたところを捕らえられた。もはやこれまでと思われたところ、一人の大将が馬を飛ばしてくるなり二人の兵士を切り殺し、曹操を助け起こした。誰かと見れば曹洪(そうこう)である。曹操は、
「わたしはここで死ぬ。そなたは早く行け」
「天下にそれがしが居なくても、殿がいなければ平安は望めません」
と、曹洪は曹操に馬を薦め、自らは薙刀を引きずって馬のあとをお供した。深夜になった頃、大きな川が退路をふさぎ、後からは敵兵が次第に近づいてくる。
「わたしの命もここまでだ。もはや生き残る道はない」
と、曹操が言うのを、曹洪は曹操を背に担ぐと、川の中に入っていった。ようやく向こう側に渡ると、敵兵が追って来る前に急いで逃げた。敵兵が追いついてもはやこれまでと思われた時、夏侯惇、夏侯淵が十数人を率いて助けに来た。夏侯惇は敵将を打ち滅ぼすと、追っ手の兵士どもも蹴散らした。やがて曹操の兵で生き残った者達が五百人あまりあつまり、曹操と悲喜共々の対面をし、引き上げた。
董卓はこの間に長安へ向かっていた。

 

さて、孫堅は宮中の火をすっかり消し止めて城内に駐在すると、兵士達に命じて宮中の瓦礫を片付けさせて、董卓が暴いた墓を修復した。そして漢王朝歴代の零位を安置して生贄を供えてお祭りした。
彼は深夜空を見据え、
「民は地獄の苦しみを見、都は廃墟と化してしまった」
と嘆息して、思わず涙を零した。
すると、側にいた兵士が報告した。
「御殿の南の井戸から不思議な色の光が立ち上っております」
孫堅は兵士にたいまつをつけさせ、井戸に降りて水中を探させたところ、一人の女の死体が引き揚げられた。長く水に使っていた様子なのに、まるで生きているようである。宮中の装束で、首に一つの袋がかかっている。取って開いてみると、玉璽(ぎょくじ。皇帝の用いる印鑑)である。
孫堅が程普(ていふ)に問うと、
「それは伝国の玉璽でございます。先ごろの十常侍の乱の折に紛失していたものと申します。今天がこれを殿に授けられた上は、天子の位に登られよとのお告げ。もはやここに長く留まるのはよろしくありません。速やかに江東(こうとう)に帰り、大計をお立てになりますよう」
「わしもそう思っていたところじゃ。明日、早速病気といつわってここを引き揚げよう」
そう決めると、兵士達に命じてこのことを他言禁止とした。
しかし軍中に袁紹と同郷の者がおり、この話を密告することで出世しようと、夜の内にこっそり袁紹の耳に入れた。袁紹はこの男に褒賞を与えると、ひそかに自分の陣屋に匿っておいた。翌日、孫堅が袁紹のもとに別れをつげに来た。