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孫策賢士を募り、王允連環の計を用いる

さてかい良(かいりょう)はその時、劉表(りゅうひょう)にこう進言した。
「孫堅(そんけん)は死に、彼の子供達はみな年端のいかない者ばかりです。この機に一気に攻めれば江東(こうとう)は我々の物になるでしょう。遺体を返して戦いをやめるようなことをすれば、彼等は力を蓄え、荊洲(けいしゅう)の禍の元になるでしょう」
「黄祖(こうそ)が捕らえられているのに、見捨てることなど出来ぬ」
「黄祖を見殺しにしても、江東が取れればよいではないですか」
「わしは黄祖と信頼を培った仲。彼を見捨てることなど出来ぬ」
劉表はついにかい良を説得し、桓階(かんかい)を送り返し、孫堅の屍と黄祖を引き換えにすることを約束した。
こうして戦いは幕を閉じ、孫策(そんさく)は江東に帰って父孫堅を弔った。そうして葬儀が終わってから有能な人材を招いて厚遇したので、天下の英雄が次第に孫策の下に集まってきた。

 

さて、董卓(とうたく)は長安(ちょうあん)で孫堅の死を伝え聞くと、反乱分子が一人減ったと喜んだ。後継者の孫策がまだ十七歳と知ると、もはや気にも留めなかった。以来益々暴挙に及んで、これに苦しまない者は無かった。
この状況に王允(おういん)は、涙を流して国を憂いた。すると近くで人の気配を感じたので近づいてみれば、王允が抱える歌姫の貂蝉(ちょうせん)である。彼女は美しく技量も優れていた為、王允は娘同然に可愛がっていた。
「一体どうしたのだ」
と王允が問えば、貂蝉は、
「わたくしを実の娘同然に可愛がって頂いたお殿様へのご恩、何とかしてお返ししたいと日頃から考えておりました。このところお殿様のご様子を拝見する限り、国家の大事に係わるお悩みのご様子。もしわたくしでお役に立てることがあれば命をかけてご恩をお返ししたいと思います」
その言葉を聞いて、王允は一つの妙計を思いついた。
「おおそうだ。天下を救うにはそなたの力が必要なのだ。漢王室の天下の人民のためにその身を投げ打ってくれるか」
「先ほど申し上げたとおり、わたくしに出来ることがございましたら、例え死のうとも悔いはございません」
王允は貂蝉に策を打ち明ける。
「いまや天下は大いに乱れ、漢王室が滅ぶ危機に瀕している。これを救うことが出来るのはそなたしかいない。というのは、董卓と呂布(りょふ)は共に女人にだらしが無い。ゆえに『連環の計』を用いて二人の仲を引き裂こうと思うのだ。それには、まずそなたを呂布にやると約束し、後に董卓に与えるから、そなたは二人の間に立って二人が仲違いするように立ち回って貰いたいのだ。そなたはこれをすることが出来るか」
「ご安心くださいませ。わたくしがもしお殿様のご恩顧にお応えできぬようなことがあれば、地獄に落ちようと悔いはありません」
王允は早速、計略を用いることとした。