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貂蝉呂布を惑わし、董卓に献上される

翌日、王允はひそかに呂布に贈り物をした。呂布は大いに喜び、返礼の為王允の館を訪ねた。王允は宴会の支度をすると、呂布を上座に据えた。そのもてなしぶりに呂布は、
「それがしは一介の侍大将にすぎぬのに、なぜ大臣の王允殿がこのようなことをなさるのですか」
と問えば、王允は
「今の世の中で英雄と言えるのは呂布殿ただ一人。わたくしは呂布殿の役職ではなく、才能に敬意を払っているのです」
ち答える。呂布は相好を崩して喜び、盃を重ねた。酒が程よく回った頃、王允が、
「娘を呼んで参れ」
と、侍女に命じる。少しして美麗に着飾った貂蝉が現れた。呂布はその美しさに驚きを隠せず、どのような人物か王允に尋ねた。
「これは娘の貂蝉と申します。わたくし、呂布殿をとても他人とは思えないので、娘もお目見えさせていただいたのです」
と言って、貂蝉に酌をするよう命じた。貂蝉は盃を満たしながら、呂布に意味ありげな視線を送る。そして王允が呂布の隣に座るように命じると、呂布は彼女を食い入るように見つめて瞬きすら忘れた模様。そのまま酔いが回るまで盃を傾けて、機を見て王允は言った。
「わたくしこの娘を呂布殿に嫁がせたいと思っておりますが、お引き受けくださるでしょうか」
呂布は、
「もしそうしていただけるのであれば、それがしはご恩に報いる為にどのようなことも厭わないでしょう」
と答える。王允は、
「では近々の内、良い日を選んで輿入れをさせましょう」
と応じた。呂布は天にも昇る気持ちで貂蝉を見つめれば、貂蝉も想いのこもった視線を返す。しばらくして宴は終わり、呂布は繰り返し礼を述べて帰っていった。

 

それから数日後、王允は董卓を自宅に招き、宴席を設けた。豪華絢爛なもてなしと、王允の巧みなお世辞に董卓がすっかり気を良くした頃、王允は貂蝉を呼んだ。
貂蝉は御簾の中から舞をしながら現れた。董卓は貂蝉の美しい容貌を見て、この娘は何者かと訪ねる。
「妓女の貂蝉でございます」
と王允が答えると、董卓が、
「歌の方はどうじゃ」
と問う。王允は貂蝉に命じ歌を披露する。その様子はまさに天女の如くである。機を見て王允が言った。
「それがし、この娘を董卓様に献上いたしたく存じますが、お引き受けいただけるでしょうか。娘も董卓様にお仕えできるとあればこの上ない幸せにございます」
董卓は繰り返し礼を言った。王允は直ちに車の用意をし、貂蝉を董卓の元に届けた。
その帰り道、前方から鬼の形相の呂布が現れ、
「王允殿は先日それがしに貂蝉をくれると約束したはず。それを今日になって董卓様に贈られるとはどういうことですか。人を馬鹿にするにも程がある」
と、王允の襟を引っつかんで大声を上げた。