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貂蝉董卓を惑わし、呂布に追われる

呂布はやるせない怒りをこらえて帰る途中で李儒(りじゅ)に出会ったので、この事を話した。李儒は急いで董卓の前に参上し、
「董卓様は天下をお取りになろうとされている大事な時。なぜ些細なことで呂布殿をお叱りになられたのです。もし心変わりなどされればたいへんなことになりますぞ」
と進言した。
「ではどうせよと言うのだ」
「明朝さっそく呂布殿を召して財宝を与え、慰めのお言葉をおかけになれば、無事に済むでしょう」
董卓は李儒の意見を取り入れて、翌日呂布を呼び寄せると言った。
「昨日は病気のせいで些細なことに気が立ち、誤ってそちを叱ったりしてしまったが、気にしないでくれ」
と、金銀財宝を与えた。呂布は礼を述べて帰ったが、その後、貂蝉を想わない事は無かった。

 

ある日呂布は董卓の眼を盗んで貂蝉と会った。貂蝉に裏庭で待つように言われ、そのようにすると、しばらくして貂蝉が月の仙女かと思われるほどの美しさで、花々の中から現れた。
貂蝉は涙を流しながら、
「私は先日呂布様にお目にかかり、お側に仕えさせていただけるとのお話に、一生の願いも叶ったと喜んでおりましたのに、董卓様のこのなさりよう。わたくしの身は穢されてしまいました。その時に命を絶とうと思いましたが、一目呂布様にお会いしたいとの心残りがあり、今日まで恥をしのんで生きて参りました。今日、お目にかかることが出来て、もはや思い残すことはありません。貴方様にお仕えすることが出来ない以上、この場で命を棄てて、わたくしの気持ちをお見せいたします」
と言うと、身を翻し池に身を投げようとする。
呂布は慌てて抱きとめ、涙ながらに言った。
「わしもお前の心には気が付いていた。必ず助けて見せるから、それまで命を絶つような真似は止めてくれ」
「わたくしは一日千秋の思いでおります。なにとぞお救いください。
「わしはいまあの老いぼれの眼を盗んで来たので、すぐに行かねばならぬ」
と、立ち去ろうとする。貂蝉はその言葉を聞き、
「貴方様がそれほどあの老いぼれを恐れていらっしゃるのでは、私が救われることは到底ありますまい」
と暗に呂布を責める。
「しばらく我慢していてくれ。わしが何とか考えるから」
と言って立ちさろうとしたが、貂蝉が呂布をなじり、涙をはらはらと流せば、呂布は優しく抱きしめ慰める。

 

さてその頃、董卓は呂布を探していた。貂蝉の名を呼んでも出てこない。侍女に尋ねてみると、裏庭に行ったとのこと。
裏庭に行ってみると、二人が仲睦まじく語り合っているところであった。董卓は怒り心頭、烈火のごとく怒鳴り声を上げた。呂布は慌てて逃げるが、董卓が追いかける。しかし董卓の肥満体では呂布には追いつけずにいた。なおも追いかけようとしたとき、董卓にぶつかった者があった。さてぶつかったのはいかなる人物か。それは次回で。